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中華 状元への道

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2018年 06月 17日

モスクワ タクシー事情 闇の世界を垣間見る

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初めてのモスクワ。ホテルについたの午後6時を回っていた。日の入りは9時過ぎだというのでちょっと散歩に出かけることにした。レセプションでもらった地図を開くと赤の広場までそう遠くない。初めての街でタクシーはなるべく乗りたくない。周りをじっくり観察しながら歩きたいのだ。モスクワ中心部は歩くには不便な道だった。道路の幅がやたらと広い。共産国家の名残りかな。歩行者用信号がほとんどない。横断するのにひと苦労。立体交差だったり、地下道入ったりでやっとこさ1時間かけて到着した。

なんと広場は封鎖中。ワールドカップイベントの設営か資材が積み上がってました。広場周りの赤い建物は深く鈍く光る。ともかく何枚か写真を撮り、あわただしく帰途に着く。食事の予定があるからだ。歩いてでは間に合わないのでUberを呼ぶ。現地の会社Yandexに買収されたようだがUberアプリは使えた。しかし配車はしたものの結局は幅広の道路で落ち合うことができずに、やむをえずキャンセル。キャンセルフィーはしっかり取られた。

最後の選択はタクシー。並んでいるタクシーのひとつに声をかけた。「ホテルまでお願い」「メーターでいいね。料金はこちらに」と細かい字が並ぶボードを見せられた。VISA、Masterの文字だけやたらとでかい。

「カードで払える?」
「キャッシュオンリー」

iPadに表示されるメーターをゼロにセットしてスタート。画面にはたくさん数字が表示され、どれが料金かわからない。とりあえず出発。

ドライバーは太った不精ひげのお兄さん。ダッシュボードに招き猫がいる。なぜか中国で買ったそうな。イスラエルから来たという彼は英語はそこそこできる。これはちょっとした安心ポイント。ロシアは英語がまったく通じない。というかみんな話す気がない。英語に媚びてない。彼はジョージア(グルジア=ソ連邦)で生まれ育ち、両親とイスラエルに渡った。金を稼ぎにモスクワに。「ロシアはいいよ。他人の宗教に関心はないからね。テルアビブはそうじゃない」
「テルアビブね。首都だね」
「首都はエルサレムだよ」
だよね。 ちょっと聞きたかっただけ。

彼は本業はエコノミストでドライバーはセカンドジョブだという。

「お金持ってたこともあるけど全部カジノですっちゃったよ。2ミリオン負けて祖父のマンション3つ売ったんだ。Stupidだったよ」と嘆く。

なんかあやしい展開。金をせびられないかしら。まあともかく、世界に広がったジューイッシュの話なんかしながらフレンドリーな雰囲気でホテルに到着。

ホテル前に着くとゲートに入らずに、料金を伝えてきた。12,000ルーブル。ん?高すぎる。しかもホテルのゲートを入らないのが怪しい。とっさにスマホで計算。200USドル弱。来たあ〜!久しぶりにはまった!

渋滞があったが乗車時間は20分程度でしかない。直線距離で4キロ。

「高すぎる!払わない!」
「なに⁈オレはボード見せて説明したぞ、ユーはアグリーしただろ!」
”No, I don’t pay! It’s too expensive! Ridiculous!”
“I know it’s expensive but you agreed. It is VIP taxi. You see?“

と言いつつ再度乗車時のボードを見せるおっさん。確かにVIPの文字。小さな文字でちょこっとね。でも書いてあろうがなかろうがただの古い日産車じゃないの。ともかく払わないと再度宣言。

車から出ようとレバーに手をかけるとロックがかかって中から開かない。やばい。これはマジもんだ。閉じ込められた。さてどうする?

「ともかく高すぎる」
「じゃあいくらなら払うんだ?」とドライバー。
「10ドル」
相場ならこんなもんだ。
「ふざけるな!じゃあこれからポリスに連れてってやる!」おいおいまてよ。ぼったくりタクシーが開き直って警察かよ。おっとまじか。やつは再度車を出発させた。

車はぐんぐん進んでゆく。
だんだんびびってくる。
解決策が浮かばない。
どんどんホテルから遠ざかる。

「ヘイ、ノーティボーイ、車を止めろ。いくらなんでも高すぎる。オレは時間ないんだ。約束がある」

「ダメだ。こっちは時間はいくらでもある。この料金は会社の規定だからオレは会社に払わないといけない。オレにも生活がある。おまえがボスと直接話せ」

するとやつはスマホからどこかへかけ、ロシア語で何か話した。低い声のオヤジがスピーカーホンに出てきた。マフィアの口調だぞ。英語がやたらうまい。旅行者からたんまりふんだくってんなこいつら。これは脅しのパターンに違いない。

「おい、おまえ、10ドルしか払わないと言ってるらしいな。そんなのは許させないぞ。警察に突き出してやる」

やるならやれよ。でも警察もグルかもしれないな。もしかしたらニセ警官ってことだってある。ここは刺激しちゃいけない。電話のオヤジには無言作戦を取ろう。

「.........」


電話の向こうのボスはまくし立てて脅してくる


「...........」


「なんで話さないんだ?早くしゃべれ!」とドライバー
「ノー、オレは知らない奴と話さない..........」

無言を貫くと電話は切れた。

ドライバーが言う「いくらなら払うんだ?」
「10ドルだ。キャッシュ持ってないし」
「USドルでもいい。ユーロでも、円でもいいぞ」
「じゃあワンサウザンド円なら払う」
「そんなのラビッシュじゃねえか。ロシアじゃ交換したら5ドルだぞ!」と言いつつ財布から各国紙幣を取り出す。何枚も溜まってる。円のお札も入ってる。

「オーケー、10,000ルーブル(160ドル)に負けてやる。これがファイナルだ!おまえが料金にアグリーしたことは車載カメラに全部映ってる。警察行ったら負けるぞ」

「オレはアグリーしてない。そんな馬鹿げた金額払わない。ユーのIDカード見せなさい。スマホに撮ってフレンドに送るから」

「オーケーID見せてやる。撮るなら撮れ悪いのはおまえだ」と財布を探る。

結局IDは出さない。

するとやつは車を路肩に止め、もう一度電話をかけた。今度はスピーカーホンにせずにロシア語で何か報告している。そしてUターンさせてホテルへの道を戻り始めた。どうやら最後のヤマが来たようだ。

「5,000ルーブルにしてやる。これが最後だ。オレにも生活がある。モスクワはワールドカップで物価が上がって大変なんだ」

勝負はついたかもしれない。交渉ごとで連続2回譲歩しちゃいけない。妥結への焦りが見える。しかも生活の苦しさを訴えるとは、高額請求の根拠が弱いことの証拠だといえる。

「ダメだ。10ドルしか払わない」
ここは意地の張りどころ。
「.......」

しばらく走りホテル前で再度Uターンしてゲートの外で止まった。

「5,000ルーブル払え」
「ノー」
「じゃあいくらなら払うんだ?」
「2,000ルーブル」決めどきがきた。

「じゃあまず2,000払え」
お!ゴールが見えたか?

「まず2,000渡せ、そしたらドア開けてやる」
そうきたか。渡したら次の請求くるんだろ。

「ドアが先だ」
「ダメだ。金が先だ」
「ノー、信じられない」
「じゃあ助手席に2,000ルーブル置け」

とりあえず財布から1000ルーブル札を二枚取り出す。財布があるのを見せるのはリスクだが仕方ない。

「2,000出せ」

とりあえず1,000ルーブル札を助手席に投げた。

「もう一枚はドアを開けてからだ」

とうとうやつは運転席ドアを開けて外に出た。バックシートに周りドアに手をかける。開かない。どうやらさっき私が出ようとして何度も試行していた時、逆にロックしてしまったようだ。彼は助手席席から後部席に手を伸ばし、ついにロックは外された。私は外に出て残りの1,000ルーブルを手渡した。紙幣をもぎ取った彼は運転席へと進んだ。しかしすぐきびすを返してこちらに戻ってきた。私も身構える。まだなんかあんのか?

なんのことはない。私が後部ドアを閉めてなかったのだ。日本なら自動で扉は閉まるからね。彼は走り去っていった。スマホでナンバープレート撮るのはやめておいた。相場の2倍以上だが、こっちにも落ち度はあった。やむなし。

相当険しい表情をしてたのだろう。道にいたこれまたイカツイ金髪角刈りお兄さんに話しかけられた。

「たくさん払ったのか?」
「イエス。ずいぶん値切ったけどね」
「モスクワのタクシーは気をつけろ。マフィアだからな。赤の広場からきたんだろ?あそこのタクシーはみんなおんなじだ」

あとでこの顛末を現地に住むヨーロッパ人に話した。彼の知人も同じ目にあったという。その時は胸ポケから拳銃出してダッシュボードに置いたそうだ。被害者は大通りの真ん中でドアから飛び出して逃げた。ロックされてなかったらしい。

ホテルでタクシー事情について再度検索してみた。
やっぱり書いてある。出発前に一応は調べたんだ。
「モスクワのタクシーは今やみんなメーター式で明朗会計です」

明朗と言えなくもないけどね。正しくはぼったくりという。

あいつはいいやつだと思ったんだけどな、やらされてただけなのかな?どこからが嘘か教えてくれよ。借金のかたにされてさ。 ワールドカップ時期なんかは掻き入れどきだからノルマとかあるんあろうな。

以上



by zhuangyuan | 2018-06-17 18:38 | 時事


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