2018年 01月 05日
台北で半日フリーな時間ができたので土曜日朝に足を伸ばして北投に行ってみた。 北投は温泉地で昔は芸者もたくさんいたという。地下鉄淡水線で30分ほどで北投駅。そこで乗り換え一駅で新北投駅に到着。一人で温泉入る気にはなれないので、友人にすすめられた温泉博物館で歴史でものぞいてみようかと。 川沿いの道を温泉街に向かい歩く。ふとみると趣のある木でできた建築物が見えた。吸いよせられるように近づくとなんと図書館。 確かに地図には図書館が載っている。まさかこれが。中は広い空間に光がさしこみ、木枠の向こうには周囲の緑がみえる。バルコニーにもデスクがしつらえられ読書ができる。ずっといたい。でも街の入り口付近で長時間いるほど時間がない。 近くにあるはずの温泉博物館が見当たらない。通りすぎたか?しょぼい建物なのか?来た道を戻る。まさかこのカバーで覆われた工事現場が?でも少しの可能性を期待して建物の近くまで行ってみた。やはり改修工事で閉館中。ここが目的地なのにね。あきらめきれずに中をのぞくとお姉様が何人か出てきた。入れないか尋ねてみると、中には入れないがボランティアガイドの説明を受けられるという。「あそこに見える川の上の休憩所で5分後からガイドがあります」ラッキー。 説明をしてくれたのは両親よりも年上らしきお姉さま。日本語が達者だ。時々英語と中国語が混じる。英語の発音が綺麗だからアメリカで教育を受けたのかもしれない。何しろ台湾の歴史は複雑だからね。 彼女の説明は100年前から始まった。 日清戦争直後に大阪の商人が黄金を掘りに台湾へやってきた。しかし許可が得られずに硫黄を取りに北投にきた。ここでは原住民が硫黄を採っていた。ちなみに台湾で原住民という言葉は差別的ニュアンスがない。彼らは400年前から硫黄を取引していたという記録があるそうだ。でもって彼女の話は、くだんの商人がここのお湯で傷を癒し、初の温泉宿「天狗庵」を開業したと続く。「ガイドさん、すみません。温泉の話に行く前に400年前の原住民の話してください」 当時から原住民は硫黄を掘る技術を持っていたそうだ。台湾にはるばるやって来たスペイン人やオランダ人に硫黄を売っていた。買った方は海賊退治のための弾薬にしたという。「でも原住民はお金をもうけることはできませんでした」というかご多分にもれず経済的には収奪されたのかな? ともかく硫黄は採っていた。ただ温泉という概念はなかったようで毒水と呼び入ることはなかったという。毒水から立ち昇る湯気に覆われた世界は幻想的で、しかもこのあたりは原住民族の巫女が支配していた。北投(ホクトウ)という名も巫女を意味する現地語ペッタウに由来するそうだ。北投は國語Beitouではなく日本読みホクトウが元々ついた名前ということ。 凱達格蘭族稱這煙霧彌漫、硫礦味四溢又充滿神秘感的地方為「PATAUW」,意為「女巫」。 ガイドさんが発音してくれるパッタウという音がなんとも美しい。 北投温泉博物館も元はといえば温泉施設で1913年に完成した。明治大正と続く文明開化という西洋技術崇拝からイタリアで勉強した設計師がローマ様式を浴室に取り入れ、西面の大きな窓にはステンドグラスがしつらえられた。夕方になると湯気が立ちこめた浴室に七色の西陽が差し込む。今ここで見れないだけに想像が膨らむ。ロマンティック。非常浪漫的。そして風呂から上がると榻榻米tatamiの大広間でゆっくり寝転がる。いいねえ。 その後、日本が戦争に負けて国民党軍が接収する。温泉文化はなかったのでオフィスとして活用した。その後、歓楽街に変わって男を癒すのだがこの部分のお話はガイドにはなし。 温泉博物館は2018年10月再オープン。 30分ばかりの説明で400年もの時空を行ったり来たり。 「ありがとうございます。とても楽しかったです。ところでお姉さん、身分証バッチのお写真がずいぶんと若くないですか?」 「おほほ。これ20年前なの。ガイドをはじめたころ。まだ60代のころよ」 「今も美しいですよ。記念に写真撮らせてくださいね」 お洒落なメガネを取り出してポーズ。カシャ。 すると横から3人組の学生さんに話しかけられた。 「お時間あればインタビューさせて下さ〜い。あ、ガイドさんもいっしょに日本語通訳してください」 「僕は中国語できるから大丈夫だよ」 「ええやったあ!台湾にどのくらいいるんですかあ?」 「4日」 「4日でそんなにしゃべれるのぉ、すご〜い」 どこでも学生さんは似たようなもんだね。 どうやら大学で観光客にインタビューする宿題が出てるようだ。 1人が質問者となりiPadで撮影開始。もう1人は私の横でiPhoneで音声をとる。なんか本格的。 まあ質問内容はごく一般的で刺激のあるものはなし。難しい質問されてもこちらの中文能力が追いつかないかもしれないのでよしとしよう。 なんかぶらり途中下車の旅のような半日だった。今度は泊まりで来ないとね。 以上
by zhuangyuan
| 2018-01-05 20:40
| 文化、歴史
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