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中華 状元への道

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2012年 05月 20日

まじめなことをゆかいに シベリヤ抑留

一週間

井上 ひさし / 新潮社



井上ひさしの没後に出た本。
シベリヤ抑留のお話です。

帯には「吉里吉里人」に比肩する面白さとありますが、
いくら井上ひさしの本でも捕虜収容所での一週間なんかを書いた本ですので
暗くて重いんだろうと、読み始めるのを逡巡してました。

いやいやどうして、やっぱり面白い。
氏のお言葉通りです。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはあくまでもゆかいに」


元共産党員の主人公のおちゃらけ度合いがいい。
極寒のシベリヤが少し和らぐような。

それにしても日本軍ってのはどうしようもない。
捕虜の強制労働はソ連建設に利用されるわけですが
関東軍参謀は日本兵の使役を申し出たとか。

「内地における食料事情および思想経済事情を考えるならば....」

とんでもない。

中国本土でも軍隊をそのままあげちゃったってのがありましたが
軍人幹部は下級兵士のことなんてなんとも思ってない。

さらにひどいのは楽土を求めて渡ってきた庶民たち。

劣勢になったって最後は最強軍団関東軍が守ってくれると思いきや。
敗戦間際には、満州を捨てて朝鮮を守れってことになったと。

そこで関東軍司令部の高級軍人は家族を逃がし
さらには全満州の軍人家族、満鉄幹部家族、大使館関係を輸送避難させる。
一般庶民には手が届かず。

私の祖母も全満州に散らばる軍人家族に当たったから
私がこの世にいるのであまり言えませんが。

そうと知ってみると知り合いで満州帰りの家族というのも
満鉄幹部だったり、高級軍人だったり。
これって偶然?必然?そういう人しか帰りついていないのかな?

こんなこと書いてますと
ほんとに面白いのかしらといぶかるむきもあるかもしれませんが
ご安心ください。かなり笑えますこの小説。

奇想天外な展開で
最後の皇帝溥儀なんかも出てきちゃいます。
溥儀が編纂させたという満州の民謡集も面白い。


以上

こちらもどうぞ。

天才 井上ひさし

by zhuangyuan | 2012-05-20 21:56 | 中国関連DVD、本


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