中華 状元への道

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2014年 05月 11日

カンフーで日本軍撃退?

「イップマン 序章」を息子(小5)と鑑賞。先日フライト中に観たドニー・イェンがかっこよすぎたので
借りてきました。

カンフー映画観賞後の常で、息子は早くケンカしたいといってます。
詠春拳習えばとすすめると、負けて死にたくないからやだと即答。
よわっちい。
 
イップ・マン(葉問)は実在の拳法家
広東省仏山出身。
日本占領下にも屈せず、腕っぷしひとつで立ち向かう。

アクションは素晴らしいのですが
この時代の中国香港映画の常で日本をデフォルメして描きます。
お決まりのメガネに出っ歯で卑怯な軍人が出てきて暴虐を繰り返す。
いつもの通り日本語がヘタ。

息子曰く、
「俺、今まで中国嫌いだったけど、日本が嫌いになったわ。ラムがかわいそう。」
「日本のこと悪く言うのが目的だからあまり本気にすんなよ。」と私。
「いやパパの言うこと信じられない。」

制作意図がきっちり果たされています。

でもこの時代は国民党政権下ですから事情はなかなか複雑。
wikiでイップマンをみてみると南の偽政権のころと出てきます。

南は広東語を話すわけですが
劇中で北からやってきた食いつめた拳士は普通語を話してました。
でもお互いがなんの齟齬もなく通じちゃってるのが面白い。
聞いた感じは全然違いますが当人たちにとってはやっぱ方言程度なのかな。

北の道場破りはぶっ飛ばされるわけですがこの辺は香港の北京政府に対する
意地が反映されているんでしょう。

イップマンは漢字で書くと葉問。Yip Man.
劇中で日本語通訳を通すとヨウモンと呼ばれる。
これすごい違和感あり。
固有名詞はそのままの音でいいんじゃないの?

言葉は通じないかもしれないが
武術は世界の共通語ということで日本軍トップの空手使いは冷酷ですが凛々しく撮られています。

このアクションは痛快、爽快。
主演のドニー・イエンはこの映画で宇宙最強の称号を得たとのこと。
シリーズまたみちゃおう。

ブルース・リーの師匠らしいのでブルース・リーの映画も
詠春拳視点からみるにもいいかもね。

以上

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by zhuangyuan | 2014-05-11 10:13 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2013年 09月 23日

インド映画はスゲエ!

インド映画「きっと、うまくいく」鑑賞。
インド興行成績歴代第一位。
評判は高かったものの三時間という長さに躊躇していましたが
長さをまったく感じさせないハラハラドキドキ、波乱万丈ストーリー、
始まって数分で、これはものが違う、最後までいけると感じさせられました。
予想通りに最後まで突っ走り、笑いあり、涙あり(三回泣きました。)のスーパーエンターテイメントでした。

エリート工科大学の寮に住む三人組みの青春ストーリー。

インド映画にはナヴァ・ラサという9つの感情表現が必ず組み込まれているといいます。
(1) シュリンガーラ (恋情)
(2) ハースヤ (笑い・ユーモア)
(3) カルナ (悲しみ)
(4) ラウドラ (怒り)
(5) ヴィーラ (勇敢)
(6) バヤーナカ (恐怖)
(7) ビーバッサ (嫌悪)
(8) アドブタ (驚き)
(9) シャーンタ (平安)
インド舞踊③9つの感情表現-ナヴァ・ラサ

大人気映画だけあってこの9つの表現のデフォルメがすごい。
そんじょそこらの学園物とは比較にならないスケールの大きな物語
学生の日常を描くことでインドの歴史、現在の問題が浮かび上がってくる。
いやインドのすべてと言っていいかも。
もしかしたらグローバル社会共通の問題までも。

経済発展と格差
拝金主義
過度な競争社会
エリート社会
抑圧される若者
自殺問題
成功者と落伍者
媚びへつらい
嘘と不正
因習と近代化のきしみ
貧困
家制度
婚姻慣習
男女差別
社会保障
密集した都市
大自然
インフラ未整備

これだけ書くとなんか悲惨な話に思えちゃいますが
これらを全部うっちゃってしまう成功ストーリーです。
若者たちの明るい前向きな、力強い生命力で、リズム良く突っ走ってゆくのです。
俳優がうますぎ。ランチョー最高!
ちょい役もいい味出してます。
性格や出自の違いを良く演じてる。
さすが世界に輝くボリウッドのナンバーワン映画。

私もインド亜大陸の面々とは仕事で絡みがありますが
みんなキャラが立っていてインドって人を見てるだけで深さを感じます。
学生時代に旅行もしましたが一口では語られない複雑さがあります。
二度だまされもしました。
一度はこちら
インドで生き抜く
二度目はまた今度

そのころもインドは映画が盛んだと聞き
デリーで劇場に行ってみました。
その映画は劇場を紹介されていったのですが
面白いといわれた作品は前の週に終了しておりました。
仕方なくその週の映画を見ましたが、これが大ハズレ。
暗い画面のB級ホラー。何人死んだか?言葉もさっぱりわからずじまい。

踊るマハラジャもぴんと来なかったし、
それ以来の食わず嫌い。

この映画でインド映画への見方が完全に覆りました。
もしかしたらオールタイムベストかも。

劇場で見ることを薦めます。
歌と踊りもいい。サントラほしいな。
自然描写もサイコー。

"Aal izz well !"



以上
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by zhuangyuan | 2013-09-23 17:13 | 中国関連DVD、本 | Comments(2)
2013年 09月 16日

台湾にとってアイデンティティとは

ドキュメンタリー映画台湾アイデンティティ鑑賞。
予告編を見て、ぜひ行こうと思っていたにもかかわらず、つい見逃してしまったのですが
アンコール上映をやってくれました。ポレポレ東中野

台湾には仕事で何度か行っていますが
年配の方の日本語がかなり上手いです。
しょっちゅう電話も頂きます。
メールなんて使わず達筆なファックスを頂きます。

そして日本が好き。
というより尊敬してくれる。応援してくれる。
あるお客さんの伯父様はテレビはNHKしか見ないと。
日本政府から勲章もらったとか行ってたな。
台湾はともかく日本と深い。


台湾アイデンティティ。題名がよい。
アイデンティティとは自分は何者であるかということですが
台湾はこれが非常に複雑。

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論

小林 よしのり / 小学館


でも李登輝元総統が言っています。
日本と台湾の何か違うか?日本ではアイデンティティを考える必要がないと。

少し前までは、1つの中国だとか、二つの中国だとか、いや台湾だとか
日本の新聞にも、政治用語が踊ってました。
国民党が政権奪還してからは、大陸中国の経済発展もあいまって
政治的には、大陸の圧勝といった感があります。

ただ個人のアイデンティティは政治経済ほどに簡単には割り切れない。
この映画に登場する人々は皆、日本人として生まれている。

ことさらに日本に対する愛を語るわけでもなく恨みを語るわけでもなく
淡々と自分自身や家族の激動の半生を語る。
美しい日本語で。

日本人の定義がなんだか知らないが
日本語と文化を背景した生き方考え方をする人々ということなら
まったく違和感がないどころか、純日本人とさえいえるかも。
私は会ったことはないけれど、理想の日本人。
面構えがよい。
仕種が立派。
凛としている。
目がきれい。

日本人として生まれ
戦争を生き抜き
敗戦
国民党の圧制に苦しみ、
投獄され
もしくはシベリアに送られ
さらにはインドネシアで独立戦争を戦う

ひとりひとりの口から、
戦前戦後の政治の季節に日本、台湾が翻弄される姿が浮かびあがってくる。
激しい経験を訥々と語る中に、共通しているのは近しい人たちへの愛情。
父親、妻、戦友...
獄中から幾度となく送られる日本語の手紙
焼け跡で再会する将来の妻
抑留中に思うあの娘...

自分が自分であること。
それは親しい人たちとの結びつきで意識される。

1つの言葉を通して共有したその時代。
それを語れる人たちが台湾ではすでに90歳になる。

ぜひ台湾で上映してもらいたい。
日本を想う人に届いてほしい。

台湾人生

酒井 充子 / 文藝春秋


こちらも購入。

以上
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by zhuangyuan | 2013-09-16 20:35 | 文化、歴史 | Comments(2)
2013年 01月 06日

ミャンマー落武者伝説 

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

高野 秀行 / 集英社



前回の記事でミャンマーの奥地で明朝の末裔がアヘン作ってる?とさらりと触れました。
私がこの本で一番興味を持ったのはこのこと。

ミャンマーでは世界で唯一、中国人が少数民族として認定されているそうです。
華僑じゃないんです。少数民族です。

彼らはコーカン族(果敢族)と呼ばれ、明朝の末裔を名乗っている。
平家の落武者伝説のようでわくわくしてきます。

明が清に攻められた時に最後の皇帝永暦帝とともに流れ着いた。
果敢族:流落缅甸的明朝汉人遗民(コーカン族:ミャンマーに落ちた明朝漢族の末裔)

300年経った今でも南京出身といっているとか。
原来最早来果敢定居的那些跟随明永历帝南逃至此的兵将,因南明王朝原在南京定都,所以不管他们后来跑到哪里、祖籍何乡,几百年后统统对外说“祖上来自南京府”。

永暦帝が南に逃げたときについてきた果敢の兵や将軍は、南明王朝が南京に都があったので
どこに逃げようとも故郷はというと、数百年後でも対外的には先祖は南京府から来たというのだ。


平家っていうより南朝の天皇についていた兵士の末裔って感じかな?

それが今でも存在感を持っているのが凄い。

近代に入ってからはゴールデントライアングルのアヘンを押さえていた。
なんでそこにアヘンがあったの?
それはアヘン戦争後のイギリスが絡んでるって。

1852年,英殖民者侵占缅甸,中国开始失去对这片土地的控制权。英国人发现这里的土壤气候适合罂粟生长,派人传授种植技术,并指定东印度公司垄断收购。

1852年にイギリスの植民者がミャンマーに侵入し、中国はこの土地の支配権を失い、
イギリス人はこの土地の土壌や気候がケシの生長に適していることがわかり
栽培技術を伝授した。そして東インド会社が独占購買した。

悪いやつらです。巨悪。

イギリス支配後、第二次大戦後には日本が絡んでくるのです。
因为对缅甸抗日保土有功,1947年在缅甸立国的“班弄”会议,土司杨文炳作为“果敢族”的代表参加了民族加盟缅甸联邦政府的签字仪式,缅政府总算正式承认300年来不被接纳的果敢族为其境内合法少数民族。

ミャンマーでの抗日に貢献したために、1947年ミャンマー立国時の班弄会議において
土司である杨文炳がコーカン族代表として民族加盟ミャンマー連邦政府設立儀式に参加し
ミャンマー政府より300年来承認されなかったコーカン族が合法的少数民族と認められた。


そして今なお、存在感を示し、ミャンマー政府と戦闘したりしているようです。
果敢战争

ここには中国政府も絡んでるのかな?

国際政治バランスの変化で米国と接近しているミャンマー。
簡単には読み解けそうにありません。

以上
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by zhuangyuan | 2013-01-06 18:07 | 文化、歴史 | Comments(3)
2012年 11月 23日

中国コピー商品 梁山泊説

先日、朝日新聞書評欄に余華のエッセーが紹介されていました。

ほんとうの中国の話をしよう

余 華 / 河出書房新社


余華といえば

活きる 特別版 [DVD]

ハピネット・ピクチャーズ


この本はキーワードで中国を評論しようというもの。
書評にあげられていたのは「山寨」という言葉。

もともと山奥の防御用建造物をさすが、今は政府に管轄を外れたものをさす。
・・・・この言葉をかぶせればコピー版や海賊版も社会心理において合法的、合理的なものに化すという。


この紹介だけではぴんときませんでした。
ネットで検索しても「パクリ商品」などという軽い言葉しか出てこない。
もっと深みがある気がする。

そこで原文をあたってみました。「十个词汇里的中国」(10のキーワードで読む中国)
(もちろんただで。)

最近このブログが中国語学習目的であったことを忘れているようですのでちょうどいい機会でした。

中国にはケータイだったり、ブランド品だったり、DVDだったりと、
ありとあらゆる偽物、コピー品が氾濫していますが
その頭に山寨とつけるとなんだか かっこいいらしい。
偽物k-タイなら山寨手机、
コピーDVDも盗版じゃなくて山寨版。

山寨というと砦です。
腐敗した皇帝を倒すための反乱軍の砦。
水滸伝の梁山泊みたいなものです。

中国ではこの逆賊ってのが天命を得ると皇帝までのぼりつめちゃうって例が
いくらでもあるから、この砦にこもって戦う、奴らってのも、けっこうかっこいい。

毛沢東だってそんなようなものですよね。
農村から都市を包囲してゲリラ戦しかけて天下をとった。

今の中国はすっかり経済大国になっちゃって
貧富の格差が拡大して大変なことになってます。
そんな状況下で共産党と国有企業が甘い汁をすって管理しようったって
言うことなんて聞かねえよっていうのが山寨精神なんでしょう。

WTOだとか最近はTPPだとかコピー商品取りしまりとかでやかましいですが
そんなものは勝ち組が支配の構図を固定化したいだけです。
えらそうなお題目掲げたって結局は既得権益の保護ですね。

山寨たちは逞しいのです。

山寨现象是草根文化向精英文化发出的
挑战,也是民间对官方发出的挑战,弱势人群对强势人群发出的
挑战。

(山寨現象は草の根文化がエリート文化にしかけた挑戦なのだ
もしくは民間が官に対して起こした挑戦ともいえる
弱いものたちが強いものたちに向かっていっている)


かっこいいなあ。

。社会矛盾的普遍和尖锐,引发了世界观和价值观的混乱,
然后催生了山寨现象。山寨现象可以说是多种多样的社会情绪日积月累以后,
突然间释放了出来,然后不断演绎成了反权威、反主流和反垄断的闹剧似的社会革命。

(社会矛盾が普遍化し、激しくなり、世界観や価値観が混乱を来たし
山寨现象が発生してきた。山寨现象は社会の多種多様な不満が鬱積し
突然吐き出され、反権威、反主流派、反独占に立ち上がっているような
社会革命といえる。)


中国の今をときめく民営企業だってもとは違法すれすれでやってたわけです。
共産党だって思いっきり違法だった。

今はおれ達も豊かになってやるって山寨から立ち上がっているのです。

北京五輪のとき、政府は聖火ランナーを官が選抜し、走るルートも厳密に規定したそうですが
このときも山寨聖火ランナーが登場したとのこと。誰もが国を愛しているのだから、選ばれなくっても
おれ達だって権利があるんだと田舎の農民たちが立ち上がった。

村民手拿自制的简易火炬互相传递,每一个村民都有资格参加,
无须经过政府有关部门的批准。他们神情自豪,他们对祖国的热爱丝毫不亚于正版的火炬传递者

村民たちは手製の簡易聖火つなぎ、村民みんなが参加の資格をもち
政府部門の許可も必要もない。彼らは誇りにあふれた表情で、
祖国への愛は、正式な聖火ランナーに少しも劣ることはなかった。


ともすると中国人民は強力な政府に押さえつけられていると思われがちですが
民の草の根はこちらでも思うより良いずっとずっと強靭なのです。

そしていつか天下がひっくり返る。


以上
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by zhuangyuan | 2012-11-23 21:06 | 言葉 | Comments(1)
2012年 08月 19日

八珍食べたい?

夏休みも残りわずか。
子供の自由研究の期限がせまっています。

小3の息子は「世界の珍しい食べ物」を調べたいとのこと。
珍味を探して絵を描いています。

世界三大珍味はキャビアとあと何?と聞かれ、
フォアグラとトリュフだと答えるも
そんなものを小学生が絵に描いたところで何も面白くはなさそう。

実際iPadで画像検索するも絵で表現できそうなものはなし。

フォアグラについてはガチョウでも描いたらと検索すると
動物愛護団体のフォアグラ用ガチョウ飼育の残虐さを宣伝しているものが多くあり興ざめ。

トリュフを探す豚もいまいち。

ちなみに日本の三大珍味は、ウニ、マツタケ、アワビだそうですがこちらも絵にならず。

そこで一つ提案。
食といえばやっぱり中国。
「中国は凄いぞ。熊の手だって食べてしまう。猿の脳みそだったあるよ。」

猿はグロすぎますが熊の掌は迫力十分。

ツバメの巣やらスッポンなんかを追加します。

そこで調子にのって中国の珍味を調べてみました。

八珍といって各時代ごと区分ごとに八つづつの珍しい食材があげられます。
海八珍、山八珍なんていって。

例えば百度で検索してみると清朝の山八珍にこんなのがありました。

驼峰、熊掌、猴脑、猩唇、象鼻、豹胎、犀尾、鹿筋

ラクダのこぶ、熊の掌、猿の脳みそ、オランウータンの唇、象の鼻、豹の胎児、犀の尻尾、鹿のスジ

さすが中国、何でも食っちゃう。
ただ猿といわずに、猿の脳みそと言うってことは猿のどんな部分も食べてみて
その上で脳みそが一番うまいって言ってるわけで、ほかの動物も皆そうだと思うとちょっと怖い。

この中で私が一番意外感を持ったのは「猩唇」(オランウータンの唇)
なんでよりによって唇なわけ?かなりグロい。

大体どうやって食うわけ?まさか刺身ってことはあるまい。
こんな説明がありました。
猩唇指的是麋鹿脸部的肉。因为晒干后,非常像猩猩的嘴唇,所以沿袭下来一直叫“猩唇”。

「猩唇は鹿の顔の肉を指します。干した後の姿がオランウータンの唇と非常に似ているので
この呼び名が踏襲されている。」

ああ良かった。鹿だった。しかも干してある。

でもこの鹿はただの鹿じゃない。
麋鹿って書いてある。

麋鹿属于鹿科,因为它头脸像马、角像鹿、颈像骆驼、尾像驴,因此又称四不像

麋鹿(milu)はシカ科に属すが頭部は馬に似て、角はシカににて、首はラクダのようで尻尾はロバの似ている
のでまたの名を四不像と呼ぶ。

全部あわせるとどれとも似ていないってことですね。


中国おそるべし。
なぞがなぞを呼ぶ。

以上
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by zhuangyuan | 2012-08-19 21:19 | 文化、歴史 | Comments(0)
2012年 05月 20日

まじめなことをゆかいに シベリヤ抑留

一週間

井上 ひさし / 新潮社



井上ひさしの没後に出た本。
シベリヤ抑留のお話です。

帯には「吉里吉里人」に比肩する面白さとありますが、
いくら井上ひさしの本でも捕虜収容所での一週間なんかを書いた本ですので
暗くて重いんだろうと、読み始めるのを逡巡してました。

いやいやどうして、やっぱり面白い。
氏のお言葉通りです。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはあくまでもゆかいに」


元共産党員の主人公のおちゃらけ度合いがいい。
極寒のシベリヤが少し和らぐような。

それにしても日本軍ってのはどうしようもない。
捕虜の強制労働はソ連建設に利用されるわけですが
関東軍参謀は日本兵の使役を申し出たとか。

「内地における食料事情および思想経済事情を考えるならば....」

とんでもない。

中国本土でも軍隊をそのままあげちゃったってのがありましたが
軍人幹部は下級兵士のことなんてなんとも思ってない。

さらにひどいのは楽土を求めて渡ってきた庶民たち。

劣勢になったって最後は最強軍団関東軍が守ってくれると思いきや。
敗戦間際には、満州を捨てて朝鮮を守れってことになったと。

そこで関東軍司令部の高級軍人は家族を逃がし
さらには全満州の軍人家族、満鉄幹部家族、大使館関係を輸送避難させる。
一般庶民には手が届かず。

私の祖母も全満州に散らばる軍人家族に当たったから
私がこの世にいるのであまり言えませんが。

そうと知ってみると知り合いで満州帰りの家族というのも
満鉄幹部だったり、高級軍人だったり。
これって偶然?必然?そういう人しか帰りついていないのかな?

こんなこと書いてますと
ほんとに面白いのかしらといぶかるむきもあるかもしれませんが
ご安心ください。かなり笑えますこの小説。

奇想天外な展開で
最後の皇帝溥儀なんかも出てきちゃいます。
溥儀が編纂させたという満州の民謡集も面白い。


以上

こちらもどうぞ。

天才 井上ひさし
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by zhuangyuan | 2012-05-20 21:56 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2012年 05月 13日

木を買わずに山を買え 

GWに法隆寺に行きました。

岳父が大阪におり、行くたびに京都出身の岳父に案内してもらいます。
今年はちょっと遠出して斑鳩の里、法隆寺へ。

法隆寺最後の宮大工、西岡常一の著書を読み、本物を見たいと思ったのです。
この本は後輩に薦められました。
その彼は父親からぜひ読んでおけと渡されたそうです。

木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)

西岡 常一 / 新潮社



法隆寺を1300年守ってきた宮大工集団の棟梁の言葉は重い。

宮大工一筋。
「神仏をあがめずして社頭伽藍を口にすべからず。」
儲けなんかを考えるなと。
儲けのために民家を造ることは一度もなかったそうです。

法隆寺脇にある西の里というところに宮大工集団が住んでいて
法隆寺に奉仕して暮らしていたが明治維新の廃仏棄却で食えなくなったといいます。
それでも平成までは続いた。

法隆寺は世界最古の木造建築で1300年建っているのですから
それだけでも驚きですがそれに使った木も凄い。

例えば大伽藍を建てるには樹齢2000年の檜が必要だといいます。
薬師寺を再建したときは直径2m、高さ20mの檜が必要だったと。
それには樹齢2000年必要。
日本には500年程度のものしか残っていないんですって。
そこで台湾に切りにいったそうです。
樹齢2000年の木は神のようだと。

そんな木を使った法隆寺。
1300年経って修理のときに、かんなをかければまだ檜の香りがすると。
まだ生きているんです。
樹齢2000年が1000年経ってもまだ生きてる。
悠久の歴史に生きる木と人間。

「堂塔建立の用材は木を買わずに山を買え」

ダイナミックなお言葉。
木の質は山の環境によって生まれる。
日のあたるところ、影になるところ、風の吹くところ。
それぞれ太かったり細かったり枝が多かったり曲がったり。
そんな性質を全部生かして塔を建てる。
なんとも壮大なスケール。

そんなこんなで1300年立派に建っているのです。

ね?行きたくなったでしょ?
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大工職人の町、西の里も現存しています。

法隆寺前バス停の前には、いかるがの里観光案内所があり、
そこに入ると二階には、西岡常一氏の大工道具一式が展示してありました。
生前のインタビューも放映されていました。

古代が現代としっかりつながっているのです。

今読んでいるのはこちら。

五重塔 (岩波文庫)

幸田 露伴 / 岩波書店


こちらは安藤忠雄推薦だと。

また法隆寺つながりでこちらも買っちゃいました。

隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)

梅原 猛 / 新潮社



以上
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by zhuangyuan | 2012-05-13 22:27 | 文化、歴史 | Comments(2)
2012年 05月 06日

耳塚の話

京都奈良の旅から帰りました。
といっても妻の実家ですが。

旧所名跡をいろいろ回り、国宝やら重要文化財をたくさん見たのですが
私が心に引っかかったのは比較的マイナーなこちら。
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耳塚といいます。
私たちは家族でこの横の耳塚児童公園というシュールな名前の公園でお弁当を食べました。

場所は秀吉を祀る豊国神社の前です。
神社の横にはかの有名な方広寺の鐘があります。

国家安康 君臣豊楽 

家康を引き裂いたっていちゃもんつけて大阪冬の陣を起こした例のやつです。
今でも鐘にこの文字があるとはびっくり。

さて耳塚ですが
こちらは読んで字のごとく耳が埋まってる。

秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)で持ち帰った敵方の耳を供養のために埋めたそうです。

軍功を検分するために、首は持ち帰れませんので耳にしたと。
そもそもは鼻塚といったらしいのですがwikiによると林羅山が鼻では野蛮だからと耳にしたといいます。
どうして耳だと野蛮じゃないのかわかりませんが。

鼻をそぐことは古代中国では刑罰として用いられていたそうですが
それを表す(yi)
なんて漢字までみつけちゃいました。


耳塚は史跡として指定されていますが京都市がつけた説明文には日本語とハングルが両方記されています。
内容は事実を淡々と記せばよいものを、卑屈な文章が気になりました。

「天下統一した豊臣秀吉が大陸にも手を伸ばそうとして朝鮮半島に侵攻したいわゆる文禄・慶長の役(朝鮮史では壬辰・丁酉の倭乱)、・・・・・」

天下統一したら世界に乗り出すのは自然の流れ。
明まで取ろうとしたわけですから立派です。
日本での説明文に倭乱って書くのはどうかと思いますよ。

でもハングルのほうで豊臣秀吉を토요도미 히데요시(トヨトミ ヒデヨシ)と書いているのはまだ救える。
풍신수길(プンシンスギル)であったら困ったものだ。
こちらは漢字を韓国語風に読んだもの。
韓国でプンシンスギルは伊藤博文と並ぶ嫌われ者ナンバーワン。
まあ嫌われる理由もわかりますけど。

ところで朝鮮出兵は秀吉の死で終わるのですが
結構優勢だったみたい。
明史にはこうあるそうです。
『明史』巻322・外国3「日本伝」より、豊臣秀吉の条
関白侵東国、前後七載、喪師数十万、糜餉数百万、中朝与朝鮮迄無勝算。至関白死、兵禍始休

関白が攻めてきて、7年、数十万兵を失い、数百万費やして、明と朝鮮連合軍に勝算なし。
関白が死んでやっと戦争がおさまった。


明史ってくらいですから清朝で編纂されたんでしょうから
明末のことは良く書くわけありませんので話半分にしておく必要があるかもしれませんが。

ただそんなに強かった秀吉も死んだらすぐ横の鐘が原因でお家を滅ぼされてしまう。
怨念が祟ったかな。


以上
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by zhuangyuan | 2012-05-06 22:27 | 文化、歴史 | Comments(0)
2012年 04月 22日

映画 「ヘルプ」鑑賞

ヘルプ 心がつなぐストーリーを観てきました。

60年代アメリカ南部の黒人家政婦のお話。
彼らはHELPと呼ばれます。お手伝いさんですね。

人種差別が色濃くのこる時代に黒人家政婦たちが語りだす彼らの立場。
全米で1000万部を超える大ベストセラーの映画化。

私映画化の前にこのベストセラーを知り原書をアマゾンで購入してました。

The Help

Kathryn Stockett / Berkley



読み始めるとなかなか難しいというか違和感がある。
黒人家政婦が語る言葉が文法がめちゃめちゃ。
中途半端な英語力の私にはこれはきつい。
いちいちつっかかっちゃう。

またこの小説が私にとってもっと深刻なのは
多くいる登場人物の名前が記憶できないだけでなく黒人なのか白人なのかわからない。
そこが一番大事ですからしんどい。
ネイティブだと名前だけで判断できるのかも知れませんけど。

そこいくと映画はいいですねえ。
一目瞭然です。
映画鑑賞後に再度原書にチャレンジする勇気がわいてきました。


さて映画のお話です。
差別される黒人家政婦。
それを当たり前のこととして受け入れ、
常に”Yes,Ma'am."といい続けていた。

都会から帰ってきたジャーナリスト志望の白人主人公の存在で何かが目覚め始める。
街の秩序にチャレンジして命をかけて語り始める。

命を懸けるといっても今の感覚からするとぴんとこないとおもいます。
先日この時代について書いた本を読みました。

アメリカ歴史の旅―イエスタデイ&トゥデイ (朝日選書)

猿谷 要 / 朝日新聞社


ここに出ていた一枚の写真を見れば雰囲気が伝わるでしょう。
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公民権法が成立した直後に自ら経営するレストランに来た黒人を追い返す白人親子。
親父はピストル、息子は斧。
なんとこのおっさんその後ジョージア知事に当選したんですって。

こんな時代に黒人が語る難しさ。

迎え撃つはおバカなお金持ち白人ギャルママたち。
古きよき南部アメリカの伝統を因習的に受け継いできた。
黒人は使うもの。
トイレは別よ。
病気がうつるから。
差別じゃないのよ区別なの。

ストーリーを書くのはいけませんのでこれくらいにしますが
私は黒人たちの置かれた境遇もさることながら
変わり行く時代のなかで揺るぎつつある既得権益を必死に守ろうとする
若い白人女たちに悲哀を感じました。

黒人には優越的地位でありつつも、男に媚び、虚勢をはる。
一世代前までは疑いもしなかった世界が、もしかしたら崩れるかも。
だから余計に強くでる。保守でいなければならないつらさ、弱さ。


これだけですと救いようのないもの同士の話に聞こえちゃいますが
映画ストーリーは重いテーマですがユーモアたっぷりです。
勇気を出させてくれると同時に世の中の不条理を感じる深い映画でありました。

以上
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by zhuangyuan | 2012-04-22 21:44 | 文化、歴史 | Comments(0)