中華 状元への道

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2016年 05月 15日

ボーダーの向こうの現実をブルースが歌ってる

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最近、メキシコボーダーに関する映画をいくつか観てる。

ドキュメンタリー、カルテルランドはここにも書きました。

「カルテル・ランド」正義の変質 その時ゲバラならどうする?

警察がカルテルを持て余してるので自警団を作った。国境の向こう側アリゾナでも白人が俺たちの生活を脅かす密入国者を退治するため自警団が組織されてる。


「皆殺しのバラッド」国境付近街シウダ・フアレスでは法の執行なんかは期待できず抗争でバンバン人が死ぬ。一方国境を隔てたエル・パソは平和な街。国境の両側で麻薬カルテルの実態を唄うバンドがヒーローになってる。


ボーダーラインでは麻薬カルテル撲滅を狙うアメリカ国防総省が国境越えてメキシコに潜入し、正義のボーダーも踏み越えて悪虐な行為で敵を仕留める。

FBI女性捜査官は国境での作戦に行けと言われ、行く先がエル・パソかと思いきや国境の向こう側シウダ・フアレスでびっくり。そこにはチンケな法なんかはあってなきがごとし。


とにかくどの映画でも描かれるのは無法地帯メキシコ。金の匂いのする麻薬に関わる組織には若者たちも組み込まれカルテルなしには生きられない。富を望まない慎ましい生活を送る一般市民も嫌が応にも巻き込まれ犠牲者が積み上がる。こんな土地誰でも逃げ出したくなる。近くにある国境の向こうには世界で一番の富が集まるプロミスランドアメリカがある。そこでは真面目に働いてドルを貯めれば、個人の力で成功をつかめるんだ。生まれついたところが国境のこっちだっただけ。若者は北を目指す。


「闇の列車 光の旅」はそんな若者を描いたものだった。ギャング団の下っ端でボスに気に入られるも恋愛する自由もない。組織の稼ぎは国境に向かう列車で強盗を働くこと。列車に乗ってるのは中南米から貨物列車に無賃乗車するアメリカへの国境を目指す不法移民たち。不法って言ったって既得権益者が自らの富を守るために作った方ですからボーダー越えちゃえばなんとかなると皆、北を目指すのです。


もう一人の主人公はアメリカを目指すホンジュラスの純朴な少女。少年は列車を襲った時に彼女を助けて仲間を殺す。そして北を目指す列車の乗客となる。乗客っていっても屋根の上ですけどね。もちろん彼は組織から追われることになります。


この国境を目指すまっすぐな列車が閉塞した人生を象徴しているようで辛いのです。線は国境までつながってる。しかもいつもそこを通ってアメリカ国境まで行ってる。でもまっすぐしか進めないし、そこしか走れないから阻止するのも簡単です。待ち伏せするのも容易。国境の向こうの光の国に進んでいるのに闇に囲まれてる。この邦題は素晴らしい。


列車が繋がってるだけでなく、今はみんなケータイ持ってますから通信なんて自由にできる。電波は簡単に国境を越える。でも人は超えられない。ただそこに生まれたと言うだけで壁に阻まれる。法に阻まれる。土地のしがらみにも。


この映画の車窓というか列車周りの風景が美しいのも辛いんですよね。自然は美しくどこまでも繋がってるのに人間だけが壁作って法作って差別して搾取のシステム作ってる。


映画のネタバレして恐縮ですがホンジュラスの少女は国境を越えることに成功します。

夢の国にたどり着いて先に移民した親戚に電話する。希望の国での第一歩を踏み出して映画は終わります。


この先少女にどのような人生が待ってるのかわかなないのですが、そこで思い出しちゃったのがブルース・スプリングスティーンの曲。アメリカに渡ったメキシコの兄弟を歌ったもの。Sinaloa Cowboys (The Ghost Of Tom Joad)1995年のアルバムです。国境の両側のシビアな現状をアルバム全体で詞にしています。


私当時友人に誘われこのアルバムのツアーを聴きに行きました。アコースティックギター一本で静かに歌い上げるでしたがブルースの英語がさっぱりわかりませんでした。ライブ後に歌詞カードを読んで意味の深さに後になって知るという失敗をしたのです。


歌の中でアメリカに渡ったミゲールとルイスは農場で仕事を見つける。

でも3年経っても生活は苦しいまま。

そこへもっと金になる話が聞こえてきた。


Word was out some men in from Sinaloa were looking for some hands
Well deep in Fresno county there was a deserted chicken ranch
There in a small tin shack on the edge of a ravine
Miguel and Louis stood cooking methamphetamine


シナロア男たちが人を探してるって

そこはフレズノの奥にある荒れ果てたニワトリ農場で

渓谷の淵に掘っ立て小屋があるミゲールとルイスはメタフェタミンを作った



麻薬工場ですよ。シナロアってのはメキシコにあるケシの産地。

国境を越えたはずなのにまたあのしがらみに絡まってる。

いわゆるグローバリズムってこういうことだよね。キレイな単純労働は世界にどこだって安くなる。国境のこっちでも。手っ取り早くて金がいいのは方の裏側だけ。


でこの後どうなると思います?アニキのルイスは小屋が爆発して死ぬんです。

ミゲルは燃える小屋を見てる。そしてアニキと貯めた金を持って旅に出る。これが希望というならむごすぎる。


ブルースの観察眼には恐れ入ります。一曲で人生歌い上げる。

この曲1995年のものです。そして20年経った今も構図変わらない。秩序がなくなってもっと悪くなっているのかも。

私、1990年にメキシコを一ヶ月旅行しましたが、当時こんなメキシコの事情を知らなかった。

25年ぶりにメキシコ行きます。来週。仕事ですけどね。


以上



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by zhuangyuan | 2016-05-15 09:00 | 時事 | Comments(0)
2016年 05月 05日

「カルテル・ランド」正義の変質 その時ゲバラならどうする?

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「カルテル・ランド」試写会にて鑑賞。

メキシコ ミチョアカアンで麻薬カルテルが跋扈し警察も手がでない。さもなくば警察も彼らに抱き込まれてる。子供たちまで巻き込んだ殺戮の繰り返しに対し、街を守るのは自ら銃を持って立ち上がるしかないと自警団が立ち上がる。中心になったのはミレレス医師。長身痩躯にカーボーイハット。優しい面立ちにも鋭い眼光が光り、演説すれば民衆を惹きつける。街の支持を得た自警団は徐々に勢力を拡大しカルテルから街を取り戻してゆく。

勢力が拡大すると警察権力が抑えにかかる。ヘリでやってきて武装解除を迫る。民衆がおびえていると。しかし民の支持をバックに武装した警察隊から武器を取り戻す。街の安全のため。正義の武装がなし崩し的に認められる。

カルテルアジトを急襲する場面もカメラが回る。思わぬ方向から銃声がなり画面が揺れる。ドキュメンタリーならではのヒリヒリとした緊張感。カルテルの幹部を連行する。自警団メンバーは幹部を殴る。次から次へとやってきて押さえつけられた幹部を殴る。憎しみの過剰。

正義を掲げた小さな抵抗から、勝利を重ねるごとに勢力を増し、大きな力を得ると惰性がつき、正義があやふやになる。驕りも加わり過剰へと進む。そして中から変質してゆく。リーダーミラレスは嘆く自警団はカルテル化していると。警察組織からの再三の懐柔工作を受け、ついには迎合の時を迎える。

ミラレス医師は身の危険を察し、組織を離れて街を出て行く。

試写会にはスペシャルゲストとして「ゆきゆきて神軍」の原一男監督のトークがありました。

4回観たといいドキュメンタリーとして絶賛するも観れば観るほどわからなくなるという。権力に対するため民衆が武器を持ち立ち上がることを否定しないが自警団の変質や権力への同化の見せられると自信がなくなると。
「皆さんどう思います?」と原一男監督。

わからない。
特にわからないのはミレレス医師。カリスマ性を持つリーダーがあっけなく組織を去る。組織を立て直すことにカリスマ性を発揮すれば正義の道もあっただろうに。映像の迫力と多層な構造の絡み合いに頭が熱し答えが出ない。

映画の余韻冷めやらぬまま翌日にはGWの家族旅行に出ました。旅先で私なりの答えを見つけたんです。というか本に教えてもらった。ふと立ち寄った古書店でみつけたのはゲバラの本。
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現代思想 2004年 10月臨時増刊 「総特集 チェ・ゲバラ」そのなかの一編「路上の紳士」(越川芳明)にこうある。

ゲバラが10代の頃にに取り憑かれていたのは、革命でなく放浪だった。

ゲバラは自ら血の中に、ほうっておけば立派な独裁者になりかねないカリスマ性と残虐性があることに気づいていた。


そしてイギリスの作家の言葉を引く
「生物学の一般的な規則によれば、移動性の種は定住性の種ほど"攻撃的"でない。」


ゆえにゲバラはキューバを去った。
ミラレス医師もそこに自覚的であったのではなかろうか?定住する権力は攻撃的になる。そのなかでカリスマとなることの危険を達観していたのか?武器を持ち続けると抑圧側にまわるという必然を避けていたのか?ミレレスは放浪の旅へ出て、警察傘下となった自警団はいかなる未来があるのか?

なんてことをアレコレ考えてたらあっという間に目的地に着きました。さあ旅を続けよう。

アメリカ側ボーダーでのプアホワイト自警団の成り立ちも非常に興味ぶかいしシンプルにはわりきれないのですがこれは映画を観てのお楽しみ。



以上


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by zhuangyuan | 2016-05-05 18:25 | 映画 | Comments(0)