中華 状元への道

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2015年 05月 09日

文革を描く大物監督には冷たい毒がある「妻への家路」鑑賞

映画「妻への家路」鑑賞。

題名からいったらスルーですが陳道明主演で张艺谋監督なら観るしかない。

原題は「归来](帰来)
例のごとく元のほうがよい。
「妻へ」がついちゃうとテーマがちっちゃくなっちゃう。

この予告編のほうがシンプルで深い。

右派として収容された夫の帰りを待ち続ける妻。
巩俐(コンリー)
老けた演技にドキッと。

夫は一度は脱走して妻に会いに来る。
妻と再会もすんでのところで阻まれる。
密告したのは娘。

純粋ないたいげな少女も、迷いつつも時代の価値観に従わざるを得ない。
親をも売るのがイデオロギー。

文革が終わり、20年ぶりに家路につく夫が出会ったのは
記憶障害になった妻。

愛し続け、待ち続けた夫が認識できない。
さらに待ち続ける。
夫を拒否し続ける。
娘とも疎遠になっている。

悲しすぎる。
淡々と時だけが刻まれてゆく。
強い心をもった不器用な人間は時代の変化に器用に対応できない。
信じるものは常に信じ続ける。

器用に立ち回っている人もたくさんいるんです。
それは善悪では語れませんが、文革中も指導的立場で
文革が終わって四人組が追放されて価値観が反転しても、
なおもうまく立ち回りその地位にとどまる。
監督はそれをデフォルメせずに淡々と描写する。

蒋介石が毛沢東になっても
文革がはじまっても
鄧小平になっても
うまく泳いでいくやつはいる。

でも素直で純粋でひたむきなほど時代に潰される。
振り落とされる。

ネットで映画評を見ていると
チャンイーモウの文革に対する批判が伝わってこない、
権力におもねってるなんてものがありました。

私には逆にあまりに冷酷で厳しい批判だと感じました。

だって記憶障害になっているんですよ。

待ち続けた理想の夫は帰ってきた。
でも何か違うんです。
妻への愛は変わらないし
誠実な姿勢も変わらない。
でも何かが。

社会に対する批判精神はどこいった?
思想教育されて奉仕労働させられて
時代が変わって解放、帰郷。
解放されれば良いのか?
怒りがどこへ消えた?
天の差支配への諦観でいいのか?

帰ってくる夫がきっと持っている信念。
それを信じる妻。

はたまた記憶障害の妻は現代中国人民のメタファーか?
経済的には豊かになったけど、社会にはびこる不公正。
不公正を打倒し、理想の革命社会を求めたはずなのに
打倒すべきかつての対象よりさらに醜い格差。
この現状に声を上げない人民は
あるいは記憶障害なのか?

张艺谋おそるべし。

以上









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by zhuangyuan | 2015-05-09 20:49 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2015年 05月 02日

Hearts & Minds 絶対正義で不協和音は隠せない 

Hearts snd Minds鑑賞。


ベトナム戦争ドキュメンタリー。
1974年公開当時は日本では上映できなかったそうです。

ベトナム戦争の矛盾や悲劇を描いた映画は数あれど
こんなにも為政者の胡散臭さをビビッドに写したものを知りません。

兵士は国家の建前を信じるしかない。
信じたい。
演じるしかない。
壊れないために。

プロパガンダ映画をつくり国民を鼓舞し、
勇ましい言葉を奏でと絶対正義を語り、
捕虜が帰還したら英雄扱いし、
勝ったと断じ、パレードを行う。

北朝鮮と大差なし。

世相との大きなズレ、
矛盾に気づく兵士、家族
ほころびが見えるほど、空虚に正義を語る。

映画の最後、解放された戦争捕虜たちを慰労するパーティで
ニクソンがスピーチします。

短い言葉に凝縮された矛盾。
空恐ろしい。

Youtubeに作品全部がアップされていましたのでその場面を見てください。
1時間36分過ぎごろにあります。



クリスマス爆撃と呼ばれる絨毯爆撃を敢行したことが難しい決断であり、国民から支持されるかわからなかったとニクソンは語り、続けてこう発言します。

内容抜粋します。
After having met each one of our honored guests this evening, after having talked to them, I think that all of us would like to join in a round of applause for the brave men that took those B-52's in and did the job
今夜栄えある皆様と会って話をして、思いました。B52爆撃機に乗り込み、見事にやり遂げた勇敢な男達を、我々みんなも賞賛したいと。
映画はニクソンのスピーチのあと、爆撃場面にうつります。無差別絨毯爆撃。
二週間で20,000トンぶち込みました。
結局それが戦争終結につながるのですが、何かが変。違和感。胸がざわつく。

映画にはありませんがこのスピーチはこう続きます。
because as all of you know, if they hadn't done it, you wouldn't be here tonight.
なぜなら彼らが爆撃しなければ、貴殿達は今夜ここには来れなかったとみんなが知っているのだから。
そもそも自分たちで無理やり介入して始めた戦争を
終結させたってことは誇れるのか?

戦争は泥沼に入って、予想外に捕虜がたくさん捕らえられて
それを解放すべく、民間人も巻き込んだ圧倒的な爆撃を行うってのは正当化されるのか?

このスピーチに歓声をもって応える元捕虜たちは
この言葉で癒されるのか?

巨大な爆撃機で住民を殺戮して
それを大統領が讃える。

B52がB29だったら?
ハノイが東京だったら?
ニクソンがトルーマンだったら?
感じ方も違うかな?

こんなものの片棒を担ごうとしてないよね。

以上













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by zhuangyuan | 2015-05-02 22:22 | 文化、歴史 | Comments(0)