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2015年 02月 15日

「薄氷の殺人」虚しく響く白日の花火

中国映画「薄氷の殺人」鑑賞。
ベルリン映画祭、金熊賞、主演男優賞。

バラバラ殺人
憂いを抱える謎の美女
落ちぶれた元刑事

この俳優、リアル過ぎちゃって素でやってるんじゃないのと思っちゃうほど。
みじめで不恰好、社会に折り合いつけようとしつつも武骨な男を好演。

主演女優は「藍色夏恋」のグイ・ルンメイ。
冬の女も似合う。妖しい透明感。守ってあげたい。

この映画、
原題は「白日焰火」
英語では「Black Coal, Thin Ice」
邦題は「薄氷の殺人」

そのまま訳せば、「昼間の花火」に「黒い石炭、薄い氷」
邦題が1番ダメ。
「薄氷の殺人」じゃあこの映画の歴史の転換を捉えたスケールが、
単なる謎解き殺人ミステリーに矮小化しちゃう。

白日焰火。
華やかなはずの花火が昼間に虚しく鳴り響く。
これに勝る題名はない。
観終わってずっしりきますよ。
この意味が。

舞台は1999年の哈尔滨(ハルピン)、石炭輸送の場面から。
猟奇殺人事件は迷宮入りし、時は2004年へと飛ぶ。

この1999年から2004年ってのが大事。
改革開放の成果が現れ、中国経済が徐々に世界経済に組み込まれてゆき
この時期に大爆発する。

石炭なんてまさに象徴的。
旧時代に置き去りにされてた石ころが
発展のエネルギーとしてもてはやされ、全国各地に供給されてゆく。
轟々と音を立てながら。

底辺で蠢く人々を尻目に時代は大きく変わってゆきます。
時代に乗れない犠牲者たちに構わずに。
主人公や謎の美女も置いていかれてるサイド。
というか刑事は職を失い元刑事に。

1999年と2004年は違う世界なんです。
ハルビンの町並みは一見変わらなく見える。
上海、北京のような発展はない。
でも人々の生活には大きな変化が出ている。
金が回り出してる。
同時に不公平感の軋みが鈍い音を出し始めてる。
ミシッ、ギシッ。

理不尽。
1999年はひたむきな努力の先にささやかな充足を得られると思えた。
みんなも貧乏だしね。
2004年は金を持った成功者がすぐそばに居て、時代に乗れない焦燥感が募ってくる。
でも同時に勝者たちも時代に乗った先の虚無感を感じ始めてる。

私、この時期、しょっちゅう中国行ってました。
経済大発展を音を近くで聞いてました。
わかるんです、この雰囲気。

金ができて垢抜けない街が上滑りの背伸びをし始める。
昼間の花火のように浮かれる
工場、出世競争、レジャー、歓楽街。
それぞれの世界で表面と裏の乖離がひどくなってゆく。
バラバラの死体はメタファー。

真っ暗な中、氷の上を不格好に走る。
何を追いかけてるのかも忘れて、何度も転びつつ。
経済成長ってそんなもの?

欧阳菲菲 『向往』って曲が流れる場面がありますが、それこそが今の中国を表してる。

この映画メタファーの連続で鑑賞後にどんどん味わい深くなってゆく。

私,この映画どハマりいたしました。


以上


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by zhuangyuan | 2015-02-15 07:10 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)