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2017年 03月 12日

「大きい歴史、小さい歴史」海賊か皇帝かはたまた密輸人か?

中国語原書会に参加しました。


最近、中国語の勉強が少ない私はこの原書会に申込むことで締め切り効果を持ってして原書を読む仕組みとしているのです。

会に参加した多士済々に私が紹介したのは

「“小的”台灣史」
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夏休みに家族と行った台南歴史博物館で購入しました。

台湾の歴史というと複雑でオランダやら明やら清やら日本やら、はたまた化外の地であったりつながったものはない。そこで歴史とは何を指すのか?

副題にはこうあります。
「從早期社會市井人物的角度,重現十九世紀台灣的社會實況」

早くから移民した市井の人々から見た19世紀の台湾社会

大きな歴史が国家のものだとすれば小さな歴史は人々のもの。もちろん真実の歴史は人々の歴史の積み重ねであるわけですが、実際に歴史と呼ばれているものは時の為政者が過去を都合よく綴った物語であるわけです。この本は過去の文献から人々の暮らしを紡ぎ出していくのです。

「蕃薯也好賺 渡海走私賣蕃薯」
(サツマイモだって儲かるよ。海を渡って密貿易)

こう題する章に登場するのは密輸を企む仲間たち。

当時の台湾は肥沃な土地に恵まれ農産物が豊かでありました。つまり安い。一方工業は発展しておりませんので手工業品は高いのであります。安く買って高く売るのは商人の常。そこに商材があれば商売につなげるのです。ただし国家というややこしい存在ができますと、利権はすべて国家の下にあります。管理の枠を外れるとそれはすなわち密輸。中国語で言うと「走私」と書きます。

小舟から荷下ろしをしているところを捕まえられた4人組は、その背景には別の首謀者がいるといいます。つまり船の持ち主。裏で糸を引く人間は危険を犯しませんので自分で海峡を渡るなんて事はしないのです。もちろん下手人が見つかってしまったらさっさとどこかへ行方をくらまします。トカゲの尻尾切りはいつに世でも。さらにはこの小舟は実は大船と一緒に来たわけですがおおむねの仲間たちは危険を察知するとさっさと逃げてしまったんです。そして捕まったは彼らはどうなったか?黒竜江省に流されて奴隷にされちゃったそうです。サツマイモを売って奴隷にされちゃったんじゃ割が合わない。

ほんとに儲かるところは国家が牛耳っています。国家と言うのは元はと言えば武装した集団であって海賊みたいなものです。日本にいて万世一系とか言う島国にいますと想像できないかもしれませんが大陸の国家なんてものは取ったとられたの繰り返し、今の国家すなわち政府はただ一番強かったものの末なのであります。

「海海人生」には国家になりきれなかった海賊王の話が出てきます。略奪を繰り返すうちに強大な勢力になった彼は百隻の船を引き連れ、2万人を支配下集め自ら王と名乗ります。ただひとたび勢力が落ち目になると、手下から裏切り者が相次ぎみるみる力をうしなっていくのです。最後の海戦の時、砲弾が尽きかけ、彼が弾薬の代わりに使ったのは「番銀」。番=野蛮人。野蛮人のお金つまり外国貨幣です。国は強大だがいつ果てるとも限らない。国の貨幣より野蛮人と蔑む外国の貨幣を信頼し海賊が使うお金としたのです。最後の闘いではその権力の証しの貨幣すらなげ出してしまうのがなんとも象徴的。

海面上除了砲火,還有不少蔡船施放的「番銀」,
外國銀元滿天飛舞的情況

そして本当の王になれなかった彼らは国家から略奪者の名称を与えられるのです。本当の王になれて国家を作れれば彼ら国家の売買行為は貿易と名付けられるのです。中国の皇帝なんてものはみんな最初は略奪者。民から召し上げる金だって税金と言う名に変わるのです。「中国の大盗賊」オススメ。

私も貿易の仕事に携わっていますが、出張で海外を訪れると確かに国家は利権集団だということがよくわかります。例えばマレーシア。近年のエネルギー価格の暴落で財政困難に陥った政府は利益の出ている企業を訪れ徴税に行きました。私の取引先に来た国税局の人間は武装した兵を連れてきたそうです。お前の金は俺の金。隠すやつは許さんぞ。インドは最近高額紙幣を使えなくしました。もちろん銀行に行けば高額紙幣の小さな体に変えてくれる。では何のためにそんなややこしいことをするのだろうか。それは利益を上げているブラックマーケットのお金をあなたにあぶり出すこと。銀行に両替に来たところで収入を記録する。つまり納税せざるを得ない資産を把握するのです。インドは人口がたくさんいますが納税しているのはわずか3%だと聞きました。85パーセントの人たちは納税できないほど貧乏だと言いますが15%の人たちが沢山資産を持っているのです。つまりそれを表に出す。お前の金は俺の金、国家がそう言っています。もちろん国家が厳しくすればするほど密輸の旨味は増すんですけどね。古くは禁酒法時代のアル・カポネだったりメキシコ密輸カルテルだったりね。

閑話休題。
生活のため家族のために海を渡ろうした市井の人々も国家の利権を少しでも冒すと犯罪者にされてしまいます。大きな歴史に振り回される小さな歴史上の人々。この後20世紀が近づくとこの大きな歴史に日本が登場していくわけです。日本時代の小さな歴史の物語もぜひ読んでみたいものです。

原書会に参加の皆さんの小さな歴史にも興味津々。巡り巡って地球の片隅で中国語原書を通して世界を覗いてる。なんかワクワクするでしょ?言葉ってほんと楽しい。

以上

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by zhuangyuan | 2017-03-12 23:31 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2016年 04月 30日

山河ノスタルジア 中国大発展のひだにある故郷と広東語

中国映画 山河ノスタルジア 鑑賞@渋谷 ル・シネマ
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やっぱり中国映画が好きです。
時代の大きな変化の波涛にもまれる小さな人々の人生が描かれる。
そしてその時代に私自身も参加している感覚を持ってます。

物語は3部構成。
1999年 過去
2014年 現在
2025年 未来

私にとって1999年なんて昨日とさして変わらないし、20世紀の終わりとしてむしろ未来の象徴として認識して子供時代を過ごしてました。その未来としての1999はたいした変化もない連続した日々の延長でしかありませんでした。

でも中国では違う。
鄧小平の改革開放経済を経て、1997年に香港返還を過ぎ、1999年はマカオ返還、そして2008年のオリンピックに向けて音をたたてるように変動が大きくなってゆく時でした。

第1部舞台は山西省の炭鉱の街
来る新世紀を街全体で祝っています。

主人公は幼なじみの3人
町一番の美人 タオ
お金大好き ジンシェン
勤労青年 リャンズ

幼なじみで男女3人といったら起こることは決まってますね。
友人の二人は一人を愛し…。


ところで日本で観る中国映画の欠点は字幕で名前をカタカナで表記すること。
音が違うから漢字表記すると混乱を招くとの心づかいなんでしょうけど。
それでいて苗字や役職で読んだ時も同じ呼称を使ったりする。

漢字で書いたほうが趣きがあります。
饰 沈涛 Shi Shen tao
张 晋生 Zhang Jin sheng
梁 建军 Liang Jian jun

石炭はこの頃はまだただの石ころ
でもここから中国の経済発展を支える黒いダイヤモンドに変わるんです。

投機好きのジンシェンはリャンズの働く炭鉱を丸ごと買っちゃいます。
そして石炭価格が急騰していき富豪になる。
で、もちろん?タオはジンシェンを選び、リャンズは街を出てゆく。

タオはジンシェンと結婚し長男が生まれる。名づけた名前がダラー。
Dollarって意味です。米ドルのこと。漢字で書くと到乐。楽に至る。外来語の中国語表記ってのはいつもセンスありますね。

2部、3部と時代が変わると、ジンシェンはタオと離婚し、ダラーをつれてまず上海に行き、その後オーストラリアに移住します。大金稼いで街を捨てて富豪への道を駆け上っていく。人間関係のしがらみだけでなく、絆も断ちながら。こんな時代なんです激動中国。


ここでジンシェンの名前に意味が出てくる。
「晋生」
晋ってのは山西省のことです。古い国の名前。
山西生まれってこと。お父さんは国境を愛してたんだろうな。
それが炭鉱買って、山を破壊し、妻と友人と縁を切り、故郷をすてて、あげくは国を出る。
カネ、カネ、カネ

1999年に赤いアウディ買ったジンシェンとタオの会話で、いつかアメリカに行きたいなと夢を話します。遠い目標としてのアメリカ。香港でもいいなあ、でも広東語喋れないな。憧れとしての香港。当時すでに発展していた香港は文化の最先端として大陸では羨望の的でした。開放の象徴として。歌手も俳優も洗練されたスターの多くは香港出身でした。喋るのはもちろん広東語。

物語では広東語が中国経済発展過程を測る重要なキーになってます。

1999年タオが働くのは音響機器のお店。
お客さんが持ち込んだCDは香港女星サリー・イップ。
憧れの香港スター。言葉わからないけど雰囲気に浸る。
日本でいったら若者が洋楽聴くって感じでしょうね。



この曲がたびたび重要な場面で流れます。
私もカントン語わかりませんが好きになっちゃいました。
iTunesで落としてヘビロテしてます。

中国にとっての香港は2000年代の中国大発展を経てだんだん色あせて、香港スターも大陸市場をめあてに広東語でなく普通語を使うようになります。映画も歌も普通語バージョンががメジャーに。ジャッキー・チェンだって、アンディ・ラウだって普通語上手になりました。昨年家族で香港旅行しましたがブランドショップに並ぶのは大陸観光客ばかり。でっかい声で普通語しゃべってます。レストランで私が普通語喋るとウェイターの態度は悪いですね。経済的逆転とやっかみ。複雑な香港市民。サリー・イップだっていまではイップでなくイエと呼ぶらしいです。葉=叶の読み方が広東語から普通語へ。

映画の場面2025年での舞台はメルボルン。
ジンシェンは中国を脱出し、息子ダラーとくらす。
ダラーは中国語を忘れ、父とのコミュニケーションはGoogle翻訳。未来だしね。
世界経済で重要な存在となった中国と関わるには中国語が必須との考えからダラーには中国語を習わせます。

ここで皮肉なのはダラーの中国語先生が香港出身なこと。ダラーの母親年代ですが上品な美人です。
おそらく香港返還前に脱出したんでしょう。大陸支配を懸念して自由を求めてカナダトロントへ。トロントは世界有数のオールドチャイナタウン。いろいろあったんでしょう。豪州メルボルンに流れてきた。今は広東語を捨てて、需要の多い中国子息のための普通語教師です。

父ジンシェンのコミュニティはおそらく国には住めない華僑。カネを持って国外脱出。
ここで話されるのは普通語。かつてチャイナタウンといえば広東語か福建語と決まっていました。移民の国をオーストラリアではこの未来では中国人がメジャーなのかも。でも故郷を失い、世代が進むと言葉も消える。カネだけが残る。孤独な老人が無機質に暮らすだけ。

印象的なのはメルボルン観光地の12使徒。
ダラーと女教師がデートします。
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崖が侵食し、奇岩が林立しています。かつて9本立っていた奇岩は徐々に崩れ本数を減らしてる。2009年に8本になった。2025年は5本だったかな。崩れる原因は知りませんがカネ目的の人類が精神を蝕みながら聖徒を犠牲にするように地球を破壊してゆく。ジンシェンが国土を爆破して石炭鉱山を開発したように。

国を出た根無し草の二人がドライブし流れる曲がここでもサリー・イップ「珍重」
もう失いたくない。故郷も国も家族も友人も。

不肯不可不忍不捨 失去你
盼望世事總可有轉機
牽手握手分手揮手 講再見
縱在兩地一生也等你

以上


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by zhuangyuan | 2016-04-30 10:12 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2016年 01月 31日

三つの言語が響き合う 日本語育ちってなに?

土曜日にアメ横を歩いていると
いつものように呼び込みに声が聴こえる。
一緒にいた息子(小6)がいう。

「あの人、日本人じゃないね」
「そうじゃなかったらダメなのか?」
「いや外国のひとだと応援してあげたいなっておもう」
それならよい。

私、異国の地でがんばってる人をみるとそれだけで尊敬しちゃいます。

先月マレーシアに出張したときのお供はこの本でした。
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「台湾生まれ 日本語育ち」

台湾生まれ 日本語育ち

温 又柔/白水社

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著者は台北生まれの日本育ち。

日本語は小説を書くほどですから言うまでもありませんが
中国語は日本の学校で学び、家で母親には台湾語混じりで話しかけられるといいます。そして祖母は日本時代に育ったので日本語堪能だと。

彼女が中国語を話すと、中国人は南方の訛りがあると言われ
台湾人には日本人っぽいと言われ、
中国語がうまい日本人からはデタラメだと言われるそうです。
でも彼女はこの自分の中国語が自慢だと。
自分の時間が刻まれていると思うから。

彼女のこの達観が気持ちいい。

わたしの台湾人の友人にきいてみると、台湾での言語環境はけっこう複雑で、友人自身は國語(中国語)と台湾語をしゃべり、親は台湾語と日本語、子供は國語メインなんだといいます。離れてすんでるとおばあちゃんと子供の意思疎通は結構大変なんですって。中国大陸が経済世界での重要性を増すと同時に若者にとってのグローバル言語である國語=中国語の地位があがっています。

ビジネスの席で外省人(国民党とともに台湾に来た人)と台湾人が混じる席に私が入ると、國語、台湾語、英語のミックス。ただこれが非常にスムーズ。どういった法則があるのかわかりませんがとても滑らかにことばが切り替わります。もちろん私は台湾語知りませんので、いつに間にか知らないことばに切り替わって置いていかれることもしばしば。シンガポールやマレーシアではここに広東語や潮州語が入って来たりします。

ただこのスムーズなことばのミックス環境が日本に住んでいるとなると様相が変わる。なぜなら日本人はことばに寛容でないから。東京では日本人同士でさえ関西弁以外の訛りは聞かれない。ましてや外国訛りであると会話の流れが止まってしまうことも。著者の中国語が日本人からデタラメと評されるってのも同じメンタリティから来てると思う。言語は正しいスタンダードがあり、それを遵守しなきゃいけないという半ば強迫観念みたいなものが日本人にはあるとおもう。

その意味では中国語はその辺はおおらか。中国本土では普通語と呼ばれる標準語があり、学校やテレビで使われますが、綺麗な普通語しゃべる人はそうはいない。みんな各地の訛りを丸出しでしゃべる。その証拠に褒め言葉で、“很标准”(とっても標準的だね)なんて言い方まである。ともかく訛りがあったってヘタクソだって気にしない。聞く方も気に留めない。中国は広いし、いろんな背景をもったスピーカーがいる。そこいくと私も気兼ねなく自信をもってしゃべれます。

日本ではここのところが許容範囲がせまい。これは日本人が外国語を恥ずかしがって話せないことの裏返し。そもそも正しい言語なんてのは学校だけの世界。ことばは動いているし、影響し合ってる。なのに正しくなければならないと思ってる。

日本が偏狭なのは言語だけでなく日本人って存在に対しての思い入れも。先日、大相撲で琴奨菊が優勝を飾った時の表現もそう。「日本出身力士の優勝は10年ぶり」って見出しがおどった。何それ?モンゴル出身力士は日本国籍を取得していいても純粋に日本人じゃないという意識。

著者の温さんも、こういった『「純血性」を貴ぶニュアンス』に敏感だという。
本書でも台湾で親戚のおじさんの言った台湾伝統料理ということばの伝統に引っかかる。その正統性ニュアンスがあると恐ろしくなるといいます。

1/29に下北沢B&Bで行われた管啓次郎さんとの出版記念対談ありました。
(管敬次郎さんの台湾離島紀行も以前読書ブログに書きました。本当はこちらも共著になる予定だったとか。言葉で旅する島々

そこでは冒頭に温さんの詩の朗読がありました。終始可愛らしい声と笑顔で行われる朗読が、日本人のおっちゃんが排他的なことばのを述べるくだりにさしかかると、さらりと運ぶ口調の奥底に芯の強さがぎらりと鈍い光を放ったように感じました。

この純血性への偏狭な態度は近代においても悲劇を起こし続けてる。日本は台湾、韓国で言語の押し付けを行ったし、中華民国も台湾に入って来て当分の間は、正式言語たる國語(中国語)が押し付けられた。そして台湾のことば台湾語が押し込められた。

本書にはその台湾語がたくさん登場します。カタカナで。
著者のお母さんの言葉として。私このお母さんにかなり感情移入しました。最終章でのカタコトの日本語言葉からその人生重みが伝わり、ぐっとこみあげるものがありました。

著者は言う、
「そもそも、中国語と台湾語と日本語と、ひとつずつ数える必要はないのかもしれない。三つの母語がある、というよりも、ひとつの母語の中に三つの言語が響き合ってる」P234

私は台湾にも東南アジアにも何度か行き、この言語ミックスの自然さ、不思議さを身近に感じています。このエッセイも音で聴きたいと感じました。
対談では特別にお母さんの台湾語口真似を披露していただきましたが、是非朗読で聴いてみたい。

以上



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by zhuangyuan | 2016-01-31 16:34 | 中国関連DVD、本 | Comments(2)
2016年 01月 24日

中国ではみんなが天下を狙ってる

ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望

エヴァン・オズノス/白水社

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大迫力。おすすめします。

読書ブログに書きましたのでこちらも寄ってみてください。


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by zhuangyuan | 2016-01-24 21:59 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2016年 01月 16日

生涯ベスト級の小説「狼图腾」が映画になった

映画「狼图腾」




日本で公開はいつなのよと待っていましたが
ひっそりと公開されてましたので危うく見逃すところでした。

邦題「神なるオオカミ」
小説の邦題と同じですね。

私は原文で読んだため、ゆっくり丹念に読みました。
読書人生のトップテンに間違いなく入る名作です。
完全に私のツボにはまりました。

中国語ブロガーさんたちとのウェブ読書会にも参加しました。
当時の私の投稿はこちら。
いい場面でしたので力をいれて書いてます。

文革時代に北京の知青がモンゴルに送られる。
草原では人間の活動も大自然の摂理の一部。
神が支配する草原で君臨するのは狼。
人々は生活の糧である牧羊を狼から守るのですが
敵でありながらも畏れを抱き崇拝の対象でもあるんです。
戦いつつも神の決めた絶妙なバランスを保つ。
これが草原で暮らす掟。

長老が率いる遊牧集団に若者2人が預けられる。
毛沢東の政策で知識分子が田舎に出向き農民や遊牧民として労働をさせるというもの。

つまりこのころ中央の意思が草原にまで届いている。
社会主義体制は神を否定し、エリートたちが計画をたて生産を行う。
神の摂理は気にしない。生産、生産、拡大生産。科学万能主義が草原まで達する。

青年たちは大自然の生活になじみ、草原とともに生きたいと思う。
しかし彼らの思想も都会育ちのもの。良かれと思いつつも草原の掟から少しずつずれてゆく。狼の子をこっそり飼っちゃうとかね。

小説ではとにかく自然の描写が圧倒的で、その中で生きる人間を含めた動物たちが翻弄されつつも、歴史の知恵で自然と折り合いをつけてゆく姿が描かれます。

これって映像化できるの?

映画化は嬉しいのですが、狼と馬の群れの戦いだとか、ブリザードの中の狼だとか、餌付けされて野生を失いつつもがく狼の子だとか、うまく表現できるにだろうか?CG使い過ぎて興ざめにならないだろうか?そもそも狼そんなたくさんいるの?

そんな心配は取り越し苦労でしたよ。
モンゴルの大自然も、獰猛な狼も、大迫力の戦闘場面も、
鎖に繋がれた小狼も。期待にたがわぬ映像でした。
小説の映画の権利を買ってから8年かけて動物を撮るのにふさわしい監督を探したというだけのことはある。

この動画に撮影秘話が出ています。映画みてからのほうがいいかもしれませんが。



俳優たちの演技も素晴らしい。
特に中央から派遣された生産隊主任の小役人演技が秀逸。
命令だからと言って自然の掟に背き、失敗したらスケープゴート探し。
上級のために生産あげます。短期間に。

これって60年代の話ですが、こうして自然は破壊されてきた。
計画達成のため、生産拡大のため。
それが改革開放以降は市場経済でさらに拍車がかかって、モンゴルの草原ばかりか地球まで破壊しかねない勢い。そろそろ経済成長至上主義をやめないといけない。
自然の掟に逆らうといつか報いを受ける。

モンゴルの風景にひたるだけでも観る価値あり。


以上

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by zhuangyuan | 2016-01-16 22:16 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2015年 06月 27日

ダライ・ラマの言葉は英語を通じて世界に届く

ドキュメンタリー映画「ダライ・ラマ14世」鑑賞。

観音菩薩の化身
輪廻転生

ダライ・ラマ13世の死後、その生まれ変わりとして14世となる。
現人神。

人は彼を神と呼ぶ。

でもねダライ・ラマ猊下は言うんですよ。

It's non-sense.
そんなわけねえだろって。

中国共産党政権は彼を悪魔と呼びます。
もちろんこっちもナンセンスだよって。
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I'm just one human being.
僕は人間ですからね。

とは言うものの中国共産党政府はダライ・ラマを恐れているに違いない。
彼の類稀な包容力とリーダーシップが信者を束ねた時の脅威。

彼の講話を聞いたら皆心酔してしまう。
近くに寄ったらあったかくなりそう。

即物的な政治闘争だけで勝ち上がった中国指導者には得体の知れない恐怖感を与えるにでしょう。自身への後ろめたさも加わってね。

百度Baiduのダライ・ラマ14世の説明を抜粋しておきますね。ダライ・ラマ14世
中国政府の見解がよくわかります。
达赖喇嘛流亡海外,依靠西方反华势力,利用“宗教领袖”的外衣,四处奔走游说,散布种种谎言,欺骗国际舆论。
ダライラマは海外に亡命し、西側の反中勢力を頼り、宗教リーダーのカッコをして、四方遊説に駆け回り、嘘ばかり撒き散らし、国際世論を騙している。

ところでこの作品、もっと公開館数多くてもいいんじゃない?
メディアへの露出もすくないよね。
なんでだろ?

中国のほうが儲かるからね。
中国の爆買いばかり話題にしてる。


こんな環境でもダライ・ラマは人を惹きつけてやまない。
ダライ・ラマの強靭さは発信力にあると思う。
流暢な英語で平和を説く。

映画の中で言っている。
日本人よ、英語を勉強して世界を知れと。
そして世界を体験してこいと。

この言葉が一番ぐっと来た。

チベット亡命政権ダルムサーラではチベット語の習得はもちろんのこと
語学としての英語教育を徹底してるという。

チベット語では哲学的なことも全て表現できると言いつつ
英語を勉強させる。世界を知るために。発信するために。

平和な未来なんて空から落ちて来はしませんよ。
般若心経唱えててもダメなんだよ。
自分でとことん学んで掴み取れって。

チベットの僧院でも常に学習。
高僧が言っていた。

慈悲の心と怒りの葛藤。
毎日凌ぎあっている。
慈悲の心が勝る時、悟りが得られると。

私まだまだ学習が足りませぬ。
怒りが勝ってる。
執着しちゃう。

外国語を学んで旅に出よう。

以上

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by zhuangyuan | 2015-06-27 09:19 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2015年 06月 13日

芸術は爆発だ! by ジェームス・ブラウン

Yeah!
ビート1発で空気が変わる。
シャキーン

一緒に叫びたい ハァ! イェー!
けっしてカタカナでは表現できない叫び。

踊り出したい。
ステージに駆け上がりたい。
たとえ突き落とされてもね。
ビートが鳴るといてもたってもいられない。

圧倒されました。
実は見る前は舐めてました。

ジェームス・ブラウンの伝記映画っていったって
あのビートとダンスが若い俳優に演じられるわけがないはず。

声だってどこから出してるかわからないし
顔に刻まれた凄みは人生の深みがあって初めて出てるんだから。

チャドウィック・ボーズマン(Chadwick Boseman)
何者なんだ?!

そっくり。
その言葉が失礼にあたるほど。
演じてると思えない。
魂が乗り移ってる。

私、ジェームス・ブラウンを知ったのは「ブルースブラザース」その後「ロッキー4」といった感じで、音楽は聴いた時期はあるものの彼の半生などまったくしらない。ずいぶんぶっ飛んだおじさんといったイメージだけ。

彼がアメリカンブラックの苦悩歴史をビートで打ち破り
アメリカンブラックのアイコンにまでなったことなどつゆ知らず。
差別、偏見、戦争いつも苦悩があった。
公民権運動、ベトナム戦争etc.

マーチン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺された日
ジェームス・ブラウンのライブがあった。
黒人の集まるライブ会場は暴動の危険ありとして中止要請を受ける。

それでもライブを敢行。
ブラックの理性を見せるために。
ライブ中、興奮した観客が何人もステージに登る。
乱暴に突き落とす白人警備員。
ジェームスだけが冷静でした。
このままライブ続けようぜって。

彼は直感と野生だけでステージで爆発してるんじゃない。
理性で演じているんですね。
何度もなんども練習重ねて、
ビートを合わせて、声を整えて、
ブラックの魂を体現するために。

I am Black! I am proud!

本物の映像が残っていてびっくり。


彼がいなきゃマイケルもオバマもいないんだろうね。

日本の映画館もスタンディングありにしてほしい。
そしたら俺もステージ上がっちゃうぞ。

以上
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by zhuangyuan | 2015-06-13 09:31 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2015年 05月 09日

文革を描く大物監督には冷たい毒がある「妻への家路」鑑賞

映画「妻への家路」鑑賞。

題名からいったらスルーですが陳道明主演で张艺谋監督なら観るしかない。

原題は「归来](帰来)
例のごとく元のほうがよい。
「妻へ」がついちゃうとテーマがちっちゃくなっちゃう。

この予告編のほうがシンプルで深い。

右派として収容された夫の帰りを待ち続ける妻。
巩俐(コンリー)
老けた演技にドキッと。

夫は一度は脱走して妻に会いに来る。
妻と再会もすんでのところで阻まれる。
密告したのは娘。

純粋ないたいげな少女も、迷いつつも時代の価値観に従わざるを得ない。
親をも売るのがイデオロギー。

文革が終わり、20年ぶりに家路につく夫が出会ったのは
記憶障害になった妻。

愛し続け、待ち続けた夫が認識できない。
さらに待ち続ける。
夫を拒否し続ける。
娘とも疎遠になっている。

悲しすぎる。
淡々と時だけが刻まれてゆく。
強い心をもった不器用な人間は時代の変化に器用に対応できない。
信じるものは常に信じ続ける。

器用に立ち回っている人もたくさんいるんです。
それは善悪では語れませんが、文革中も指導的立場で
文革が終わって四人組が追放されて価値観が反転しても、
なおもうまく立ち回りその地位にとどまる。
監督はそれをデフォルメせずに淡々と描写する。

蒋介石が毛沢東になっても
文革がはじまっても
鄧小平になっても
うまく泳いでいくやつはいる。

でも素直で純粋でひたむきなほど時代に潰される。
振り落とされる。

ネットで映画評を見ていると
チャンイーモウの文革に対する批判が伝わってこない、
権力におもねってるなんてものがありました。

私には逆にあまりに冷酷で厳しい批判だと感じました。

だって記憶障害になっているんですよ。

待ち続けた理想の夫は帰ってきた。
でも何か違うんです。
妻への愛は変わらないし
誠実な姿勢も変わらない。
でも何かが。

社会に対する批判精神はどこいった?
思想教育されて奉仕労働させられて
時代が変わって解放、帰郷。
解放されれば良いのか?
怒りがどこへ消えた?
天の差支配への諦観でいいのか?

帰ってくる夫がきっと持っている信念。
それを信じる妻。

はたまた記憶障害の妻は現代中国人民のメタファーか?
経済的には豊かになったけど、社会にはびこる不公正。
不公正を打倒し、理想の革命社会を求めたはずなのに
打倒すべきかつての対象よりさらに醜い格差。
この現状に声を上げない人民は
あるいは記憶障害なのか?

张艺谋おそるべし。

以上









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by zhuangyuan | 2015-05-09 20:49 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2015年 02月 15日

「薄氷の殺人」虚しく響く白日の花火

中国映画「薄氷の殺人」鑑賞。
ベルリン映画祭、金熊賞、主演男優賞。

バラバラ殺人
憂いを抱える謎の美女
落ちぶれた元刑事

この俳優、リアル過ぎちゃって素でやってるんじゃないのと思っちゃうほど。
みじめで不恰好、社会に折り合いつけようとしつつも武骨な男を好演。

主演女優は「藍色夏恋」のグイ・ルンメイ。
冬の女も似合う。妖しい透明感。守ってあげたい。

この映画、
原題は「白日焰火」
英語では「Black Coal, Thin Ice」
邦題は「薄氷の殺人」

そのまま訳せば、「昼間の花火」に「黒い石炭、薄い氷」
邦題が1番ダメ。
「薄氷の殺人」じゃあこの映画の歴史の転換を捉えたスケールが、
単なる謎解き殺人ミステリーに矮小化しちゃう。

白日焰火。
華やかなはずの花火が昼間に虚しく鳴り響く。
これに勝る題名はない。
観終わってずっしりきますよ。
この意味が。

舞台は1999年の哈尔滨(ハルピン)、石炭輸送の場面から。
猟奇殺人事件は迷宮入りし、時は2004年へと飛ぶ。

この1999年から2004年ってのが大事。
改革開放の成果が現れ、中国経済が徐々に世界経済に組み込まれてゆき
この時期に大爆発する。

石炭なんてまさに象徴的。
旧時代に置き去りにされてた石ころが
発展のエネルギーとしてもてはやされ、全国各地に供給されてゆく。
轟々と音を立てながら。

底辺で蠢く人々を尻目に時代は大きく変わってゆきます。
時代に乗れない犠牲者たちに構わずに。
主人公や謎の美女も置いていかれてるサイド。
というか刑事は職を失い元刑事に。

1999年と2004年は違う世界なんです。
ハルビンの町並みは一見変わらなく見える。
上海、北京のような発展はない。
でも人々の生活には大きな変化が出ている。
金が回り出してる。
同時に不公平感の軋みが鈍い音を出し始めてる。
ミシッ、ギシッ。

理不尽。
1999年はひたむきな努力の先にささやかな充足を得られると思えた。
みんなも貧乏だしね。
2004年は金を持った成功者がすぐそばに居て、時代に乗れない焦燥感が募ってくる。
でも同時に勝者たちも時代に乗った先の虚無感を感じ始めてる。

私、この時期、しょっちゅう中国行ってました。
経済大発展を音を近くで聞いてました。
わかるんです、この雰囲気。

金ができて垢抜けない街が上滑りの背伸びをし始める。
昼間の花火のように浮かれる
工場、出世競争、レジャー、歓楽街。
それぞれの世界で表面と裏の乖離がひどくなってゆく。
バラバラの死体はメタファー。

真っ暗な中、氷の上を不格好に走る。
何を追いかけてるのかも忘れて、何度も転びつつ。
経済成長ってそんなもの?

欧阳菲菲 『向往』って曲が流れる場面がありますが、それこそが今の中国を表してる。

この映画メタファーの連続で鑑賞後にどんどん味わい深くなってゆく。

私,この映画どハマりいたしました。


以上


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by zhuangyuan | 2015-02-15 07:10 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)
2015年 01月 19日

映画で世界を覗いみよう

2014年はよく映画を観ましたよ。

DVDも入れたら145本、劇場は55作品。
ハズレがほとんどありませんでした。
子供のリクエストで選んだのもけっこう面白いんですよね。

私のテーマは映画を通して世界の多様性を知ること。
45カ国も覗いちゃいました。
2時間で各国文化の襞にふれられるってお得。

昨年観た劇場映画ベスト10をやっちゃいます。
順番は観た順。順位はつけられません。


「新しき世界」

韓国映画
こんなすっげえヤクザ映画は初めて。
えげつないアクション。
潜入捜査の果ては?
何が「新しき」なんだか知りたい方はぜひ。
中国ヤクザも恐ろしいよ。

「ほとりの朔子」

二階堂ふみかわいい。
夏を舞台にえぐい大人たちと純粋な若き恋を描く。
大人ってのは裏があるねえ。
片田舎に短い物語が意外にも世界に広がってゆくのです。

「もうひとりの息子」

湾岸戦争のどさくさで赤ちゃんが入れ替わった。
イスラエルとパレスチナ。

イスラエルって大都会。
でも壁を隔てると...
いろんな壁を勝手に作る大人たち。
少年たちの顔がいい。生きる力。


「Act of Killing」

インドネシアの将軍が語るつい最近の虐殺。
拷問の様子を得意げに語るうちに、徐々に。
色彩が怖い。


「チョコレートドーナツ」

号泣観客多数。
アメリカでのマイノリティ差別。
ついこないだのことです。
最後の熱唱だけでもぜひ。
'I shall be released' written by Bob Dylan
私は毎朝これで目覚めています。


「そこのみて光輝く」

炭鉱の街の貧困。
男闘呼組高橋、助演男優賞あげたい。
あんなやな奴そうはいない。
いやいるかも?あんな小権力者。

「マダム イン ニューヨーク」

夫や娘はグローバル。奥様はローカル
親戚の結婚式でニューヨークへ。
語学を頑張る人好き。
言葉ができない人を小馬鹿にするやついるんだよね。
負けるな。
マダムは美しすぎる。


「ジャージーボーイズ」

クリント イーストウッドはどんなジャンルでもいける。
成功の影にはいろいろあるよね。エンターテイメントの世界は特にね。
踊り出したくなる。音楽っていいなあ。

「0.5ミリ」

天才発見。安藤サクラ。
とっくに発見されてるんでしょうけど。
介護映画でこんなに面白いとは。
楽しい、悲しい、エグい。

「イロイロ ぬくもりの記憶」

シンガポールの発展を裏で支えるフィリピン人家政婦と少年の交流。
原題は「爸妈不在家」
外国でひたむきに働く人を尊敬します。
雇ってる夫婦もそれぞれ苦労してる。
でも皆優しいんだよね。本当は。経済成長って簡単じゃない。
ダメ父ちゃんも辛いんです。


これで10作品。

でも1番衝撃を受けたのは名画座で観た
「スカーフェイス」

テレビで何度か観てるのに大画面の迫力は圧倒的。
キューバから大量に犯罪者が流入。
というかカストロが送り込む。
今やそんなキューバもアメリカと国交回復するなんて。



それにしてもアル・パチーノかっこよすぎる。
一緒に行った息子の脳裏に鮮明に刻まれたようです。
トニーモンタナ。

「ねえ、パパ、アル・パチーノとエクスペンダブルズってどっちが強い?」

以上
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by zhuangyuan | 2015-01-19 07:19 | 中国関連DVD、本 | Comments(3)