中華 状元への道

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2007年 09月 17日

小説 朝鮮総督府

出張に行くときはいつもどんな本を持っていくか悩みます。
移動時間を有効に過ごせるかの鍵になるからです。
でもほとんどの場合、さんざん悩んだすえ持っていっても
出張中の移動は疲れて寝ていてほとんど読まないなってことがしょっちゅうです。

先日韓国に行った際は、出発前日に古本屋で見つけた「小説 朝鮮総督府」(柳周鉉 徳間文庫)を持っていきました。
買う前に逡巡しました。どうせ日帝の悪口オンパレードで読んでていやになるだろうと。
しかも長い。700ページくらいある。原書は2000ページあるらしいです。
でもあとがきを読むと1967年に韓国で発行されベストセラーになったとありました。
そんな昔の本が今でも文庫(1995年発行)で出ているのならそれなりに価値があるのだろうと買ってみました。
一方的な記述であったとしても少なくとも韓国の方が日本時代をどう評価しているかの一端は
把握できるだろうと考えました。

昨日読み終わりました。
興味深い本でした。予想に反して日帝憎しで凝り固まった記述ではなく、
日本統治も評価すべきは評価し、当時の半島情勢への批判もありバランスのとれたものでした。

独立へ向けての運動や彼らのなかの恋物語なんかは全然興味が沸かなかったのですが
歴代朝鮮総督の施策や評価、日本政界とのからみなんかがよく描かれていて
飽きさせませんでした。

もちろん小説ですから脚色がかなりあるのでしょうが
歴代総督の性格なんかが浮き出てくるようで面白い。

これまでは朝鮮総督というと伊藤博文くらいしか個性を感じる人は
いませんでしたがこれを読むと
寺内正毅、斉藤実、宇垣一成、南次郎なんてメンバーの表情まで思い浮かびます。
写真が巻頭にあるのもいいですね。
同じ総督でも統治の仕方は千差万別なんです。

朝鮮総督を務めたのはみんな大物なんですよね。首相や軍部大臣を務めた人ばかり。
大物であるにも関わらず、私の頭にこれまで印象はまったくなし。
それは受験勉強の弊害で暗記暗記で名前は知っていますが中身は全くわからない。
日本史は得意で一問一答形式は参考書まるごと暗記してました。
今考えれば意味がない。

寺内正毅は米騒動とか斎藤実は2・26で死んだとか
宇垣内閣は軍部大臣現役武官制で流産とか
記憶はしていますがその背景とか人となりとかは全然しらない。

寺内は明治初期の混乱そのままに武断政治を持ち込み
弾圧弾圧また弾圧、勢い余って日本からの指示も無視して寺内王国を築こうとしたそうです。

そこで3.1運動なんかが起きてしまうのですが
その後登場するのが斉藤実。相当の人格者で、武断を捨て、文化統治を行います。
すべてを包み込み朝鮮の発展をすすめ、押さえつけるのでなく、心を奪う戦略。
経済も相当発展します。

日本の朝鮮統治でよく批判されるは創氏改名、皇民化政策、言葉を奪った文字を奪った。
これは皆、南次郎総督の時代です。
日本も戦争が煮詰まってきちゃってそういう時代の要請があったんでしょう。

大きな歴史のうねりを朝鮮総督府から描いた稀有の小説でした。
日本統治については批判とそれに対する反論がいろいろありますが
こうした問題は観点がいろいろあるわけですからよかった悪かったといっても始まらない。
経済発展の基礎を作ったのも事実でしょうが
それを利用したのも事実です。
李朝末期がどうしようもなかったのも事実でしょうが
併合されちゃったほうは生活がよくなったとしても納得はいきません。
会社だって吸収合併されて業績あがったって前の会社に愛着があり
新経営陣には不満や不満がいっぱいでしょう。
それが外人ならなおさら。
それが国家単位なんですから。

ともかく朝鮮半島は当時の日本にとって、
政治でも経済でも軍事でも最重要地域の一つであり、
金と人と知恵をつぎ込んできた。
そのわりにはあまり省みられないのはいかなるわけでしょう。

もうちょっと知りたくなりました。

以上
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by zhuangyuan | 2007-09-17 14:38 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)


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