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中華 状元への道

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2007年 06月 10日

中国歴史教

小室直樹の日本人のためのイスラム原論
小室 直樹 / / 集英社インターナショナル
を読みました。
私は小室直樹の本が好きでよく読みます。
古くはソ連本や韓国本、最近では経済もの法律ものなど。
この人京大、東大、ハーバード、MITIを出てる超天才。
何しろ難しいことを平易に書いてくれる。
私はこの人の本に書いてることは無条件に信じてしまうのです。

この本は2002年に出ていますが発売直後に実家にあったものを拝借して
そのまま積読状態でした。

宗教というのは私にとってよくわからぬもので中でもイスラムは全然わからない。
ということで強く興味を持っていたが今になってしまいました。

先日dubaiに行ってアラブにはじめて行ってこれを機会にと読み始めました。
でイスラムが理解できたのかというと、うーんなんとなく。
ユダヤ教、キリスト教、仏教と比較して噛み砕いて説明してあるが
そもそもその比較対象宗教についても知識がとぼしく、あと二三度読まないとだめかも。


印象に残ったのは次のこと。
イスラム教は他の宗教の共存も受け入れる寛容な宗教であること。
ただしイスラムの法を冒涜しない限り。

もうひとつ
イスラム教国家には近代資本主義は生まれない。
イスラムの法を守る限り来世の救済が約束されるから。
今は規範に則って祈ればよいのです。あくせく働かなくても。
詳しくは本書参照。

読むのに時間がかかった本ですが
中国に絡む話が出てくると急にスイスイ進んで吸収できました。
やっぱり中国迷なんだなと改めて認識しました。

儒教は日本では道徳観念としてとらえている人も多いがれっきとした宗教だと。

個人でなく集団救済を目指すもので
儒教の目的は理想の政治を行える聖人を作り出すこと。
よい政治が行われれば豊かになり、文化も成熟し、犯罪も起こらない理想の社会が誕生する。
それゆえ礼を重んじる。

ところで
イスラム教ではイスラム法を踏みにじる行為に対してはジハードで
徹底的に戦い、暗殺も辞さない。
そして敵を暗殺し殉死した戦士は英雄となり、来世の救済が確実となる。

この暗殺者を英雄とする思想がキリスト教社会だと受け入れられないそうです。
ただそれが理解されやすいのが中国だというのです。

司馬遷も刺客列伝を残し、歴史に名を刻んだ暗殺者たちを取り上げたが
中国には歴史教と呼んでもよいくらいの思想があるそうです。
すなわち
死んでも歴史に名を残すことが出来れば、この世の幸福など得られなくてもよい、
命だって惜しくはない。p288

歴史に名を刻むことが救済なのです。
暗殺者たちもそれを意識していたと。

ということは秦の始皇帝の暗殺を試みた荊軻なんかも
それ以前の歴史に名を刻んだ人たちを鑑みて行動したということか。
歴史はどこまでさかのぼるんでしょうか?

この歴史教があってこそ宋末の文天祥のような男があらわれるのだと。
人生古より誰か死なからん、丹心を留守して汗青を照さん
人生自古誰無死,留取丹心照汗青


どうせ皆死ぬのだから、真心を歴史に残すのだ。

以上

by zhuangyuan | 2007-06-10 23:27 | 中国関連DVD、本


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