中華 状元への道

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2006年 08月 20日

愛国英雄ってどんな人?文天祥

今週大阪に滞在した一週間の間に何を読もうかとさんざん迷った挙句、
三冊の本を持って行きましたがが結局読めたのは一冊でした。

「海嘯」(田中芳樹 中公文庫)
この作家の本は初めてでした。
中国系の本やSFっぽい題名の本をよく見かけて気になっていました。
とくに岳飛伝を翻訳しているので読んでみたいと思ってました。

この「海嘯」は宋が元に滅ぼされた最後の三年間を描いたものです。
なぜ購入したかといいますと文天祥が主人公の一人であったからです。

以前に中国出身のお客さんと食事をしていたときに岳飛の話になったことがありました。
その時彼が言いました。
「状元さん、中国の愛国の英雄といえば岳飛より文天祥のほうが人気がありますよ」

私はこの時まで文天祥を知りませんでした。
早速家に帰ってから「影响 中国历史进程的100位名人」(中国歴史に影響をあたえた100人)
という本で文天祥について読んでみました。

はっきり言って消化不良でした。
なんで英雄なんだ?

というのも解説によると
この方、元軍との戦いで英雄的な勝利を収めたわけでもなく
元軍にすぐ捕らえたれてしまいます。

ただ捉えられた後に元に屈することなく愛国心を発揮し
最後まで元軍に降伏することなく処刑されるのです。
フビライ・ハンはこの文天祥の才能を高く評価していたらしく
宰相に取り立てるといって誘いますが頑として首を立てに振らずに死んでゆくのです。

英雄というと最後まで戦い、戦いで命を落とすイメージがありますので
なんか違和感を感じました。

そこでこのフラストレーションを解消すべく今回「海嘯」を読んでみたのですが
更にたまってしまいました。

宋滅亡の前は状元でありながら、
強硬派のイメージがつよく、取り立てられず、
滅亡直前に丞相になりますが和平交渉で軟禁されてしまう。

そのご脱出して兵を挙げるも
宋逃亡政府とは合流することもかなわず、再度つかまってしまう。

そして最後に宋が滅びる戦いでは敵の船に軟禁されて
その戦いを見ている。
最後には元の首都、大都に連れられる。
そこで最後まで愛国心を失わず、元に仕えることなく死す。

なぜ彼がそんなにも愛国英雄として評価が高いのか?
以前読んだ「中国人の愛国心」(PHP新書)という本にも愛国英雄の典型として
紹介されてました。

なぜかというと彼は言葉を残したからです。
特に獄中で詠んだ「正気の歌」は歴史上の愛国者を描き
自らの無念を憂いた名作とされています。
どんなに英雄であっても文字に記され後世に伝わらなければ英雄足りえません。
逆に功績はともかく、文字に残されたもので自分の熱きたぎりを伝えることができ
それが後世の人々の心を揺さぶれば英雄として歴史に刻まれます。
さずが文字の国中国。

陳舜臣の「中国の歴史」第10巻によると
この「正気の歌」は日本にも多大な影響をあたえ
幕末の志士にもつながってゆくとのこと。
吉田松陰もそれに倣って「正気の歌」を詠んだそうです。

さらに戦前には日本の教科書にも
文天祥が載っていたそうです。
びっくりです。

以上
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by zhuangyuan | 2006-08-20 22:29 | 中国関連DVD、本 | Comments(5)
Commented by かめ at 2006-08-25 14:13 x
う~ん、知らなかった。もうちっと勉強してみます。
Commented by zhuangyuan at 2006-08-25 21:13
かめ様
この正気の歌を見てみると中国の歴代愛国者がそろっていて興味深いです。それにしても日本の場合、愛国者といって思い浮かぶ人物がありませんねえ。なんか右翼をイメージしてしまう。これも戦後教育の効果?なんでしょうか。
Commented by かめ at 2006-08-27 00:49 x
愛国者は市井の人たちだったのでしょう。みんなそれぞれの持ち場で頑張ってましたから。英雄はいないけど。
Commented by tianshu at 2006-08-27 22:38
こんばんは!私から見れば、「洗脳教育」に使われていただけです。
日本でも中国でも。国民をバカにする政権は、模範の「英雄」が必要ではありませんか?
私は楽毅がすきです。もし、楽毅は最終的に燕国に帰り、そのまま殺されたら、「英雄」にもなるかもしれません。歴史は、自分なりの読み方で読んだらいいと思っています。
Commented by zhuangyuan at 2006-08-28 20:25
tianshuさま
確かに英雄をもてはやすことはひとつの価値観の押し付けになりますので英雄なんていないほうがいいのかもしれません。楽毅についてはよく知りませんので勉強してみます。


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