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中華 状元への道

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2006年 07月 17日

「散るぞ悲しき」

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道
梯 久美子 / 新潮社
読了。

感動しました。
私文学的センスがないので小泉首相並の言葉しかでて参りません。

この本は頂いた本です。
かなり感動したらしく私に下さる約束をした後に
別の方にその本を上げてしまい、
再度購入した上で私に下さいました。

その方は読んでいる最中に何度も涙を流したそうです。
私は本を読んで涙を流したことはこれまで一度もありませんから
まず大丈夫だろうと思っておりましたが
何度もこみ上げてまいりました。
ただ通勤途中の電車の中だったのでなんとかこらえました。
夜に家で一人でよんでいたら私も…。

この本は太平洋戦争時に硫黄島で玉砕した将軍の評伝です。
私はこの栗林忠道将軍の名前も知りませんでしたし
硫黄島の戦いがどんな意義をもっていたかもまったく知りませんでした。

しかし相手国アメリカにおいては
General Kuribayashiは日本のもっとも有能で勇敢な将軍であり
The Battle of Iwojimaはアメリカの勝利の象徴であるという評価だそうです。

ブッシュ大統領もイラク戦争(2003.5.1)に硫黄島を例にとり
兵士を励ましたそうです。
The character of our military through history, the daring of Normandy, the fierce courage of Iwo Jima, the decency and idealism that turned enemies into allies is fully present in this generation.

我々の軍隊の特質、つまり、ノルマンディの大胆さ、硫黄島の勇猛さ、
また上品さ、理想主義は歴史を通じて、敵を同盟国に変えてきた。
そしてこの特質はいまこの時代にも息づいているのだ。


これほどまでに米軍の記憶に残る硫黄島の戦いとはなんだったのか?
詳しくはwikipedia参照してください。

硫黄島は米軍が日本本土爆撃のためにどうしても必要な島であり
日本にとってはどうしても死守しなければならない島だったのです。

米国と日本の当時の国力と当時の戦況からいったら
はじめから負けることはわかっていた。
玉砕はやむを得ないが、できるだけ粘って時間稼ぎをするために戦った。
そこに派遣されたのが栗林中将で
彼は米国に留学経験があり、米国の圧倒的国力を熟知しており
対米開戦に反対していた。

その合理的思想の持ち主の将軍が最後の橋頭堡に赴く。
火山灰に覆われ、植物も生えず、水もない島で22,000人の兵士とともに
本土を守るべく、最後の一兵まで徹底的に戦い抜くのです。
結局5日で落ちるといわれていた22平方キロの小さな島を36日間守ったのです。
でもこの戦いもむなしく、日本本土は空爆へとさらされていきます。

なにがこの本で人を感動させるかといいますとこの栗林氏の人柄です。

将軍でありながら特別待遇は拒否し、一兵卒と同じ境遇に自らをおき
見舞いの品はすべて兵に分け与える。
一方作戦の遂行に当たっては強烈なリーダーシップを発揮する。
大本営にも意見をすることはいとわず
受け入れられなくとも任務は全身全霊全うする。
真のリーダーです。日本人の鑑です。

そして絶対に負けることが全兵士がわかっているのに
全兵士が将軍の下、必死に地下陣地を構築し
猛爆撃の後、上陸してくる敵の大群にひるまず戦い抜く。
彼たちを支えたのは国や家族を思う強い気持ちです。

栗林将軍は家族に頻繁に手紙を書きます。
この内容がざっくばらんで変に形式張らずに家族を思い
自らの置かれた凄まじい状況を鑑みず、ひたすら家族を思うのです。
特に子供たちに書く、平易な手紙が胸を打ちます。
彼はまた兵士たちにも家族に手紙をだすことを奨励します。

その彼が一番心配していたのが米軍の本土無差別爆撃。
しきりに家族に疎開を勧めます。
自らが敗れた後の日本と家族を思い手紙に託します。
しかし歴史はとどまることなく轟々と音をたてて進んでいき
ついには徹底爆撃、原爆とつながり敗戦とつながって行くのです。

この戦争評価はどうであれ
こうして必死に戦った男たちがいたことに素直に感動いたします。
その男たちの純粋さと家族への思いが胸を打ちます。

日本人必読の書であると同時に
ぜひ中国の方にも読んでいただきたいと思います。
普通の日本人が何を思い、どう戦っていたかを知るために。

夕空はれて 秋風吹き
月影おちて 鈴虫鳴く

思えば遠し 故郷の空
ああ わが父母 いかにおわす

P104


南の島の真っ赤な夕焼けのもと
少年兵たちが歌っていたそうです。
こんな普通の少年たちも散っていったのです。

非常に読みやすい本でありますのでぜひご一読を。

以上

by zhuangyuan | 2006-07-17 20:18 | 中国関連DVD、本


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