中華 状元への道

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2006年 04月 16日

世界を読み解く先人の知恵 「漢文」

去年の7月にbook batonを頂いた際、最後に買った本として
ご紹介した「漢文力」(加藤徹 中央公論新社)を読み終わりました。
漢文力

7月からほっておいた訳ではなく、常にデスクの上にありました。
すこしずつ読み進め、先週出張中に一気に読みました。

漢文の知識を蓄えて、薀蓄を傾けたいなどとせこい気持ちから購入したものですが
期待を大幅に超える内容ぎっしりの本でした。

人間の心理、哲学、生と死、宇宙、環境問題、はたまた大量破壊兵器まで登場します。
現代社会の諸問題、現代のメンタルな悩みなども漢文の世界では
とっくに経験済みのことですって。

この筆者のすごいところは、日本語がうまくて読みやすい。
ともすると堅苦しくなりがちな漢文を卑近な具体例をあげて説明してくれる。
難しいことを簡単に説明する能力のある人を私は尊敬します。

まず原文が挙げられ、そして書き下し文、最後に著者の現代語訳。

原文から読むとすごく時間がかかりますが
現代語から読むとすらすらいけます。

本屋で一ページ立ち読みするのもいいかも
きっと買いたくなりますよ。

この方さぞかし経験を積んだ学者なんだろうと著者紹介を見ると
1963年生まれでした。若い。私と大して変わらない。
また尊敬の念を深くしました。

こんな先生に漢文習ってたら興味がもてただろうなとちょっと悔しい。
そうすれば今ごろすでに状元になってたかも。

でも実際は中学、高校と漢文には全く興味なし。
大学受験も漢文が出ないところを選びました。

自分が興味がなかったのに言うのはなんですが
最近はどんどん漢文離れが進んでいるそうです。
日本語の重要な構成要素が抜け落ちて
浅薄なカタカナ語にとって代わられるのはほんと惜しいことです。

戦前は日本人の漢文への知識量は中国大陸の知識人を凌駕していた
とどこかにかいてありました。せめて自分だけでも今から勉強するかと
気持ちだけははやっています。

そこで先日、湯島天神で行われている漢文講座のパンフレットだけは
取り寄せたのですが、これ以上週末に勝手な行動をすると家族に
相手にされなくなるのでまだ申し込んでません。

そこで本書から漢文の一つを引用します。
杨子曰,“见陆路而哭之。为其可以南可以北。
墨子见练丝而泣之。为其可以黄,可以黑。”


(著者の現代語訳)

学者の楊子は、道がいくつもの方向にわかれているところを見て、声をあげて泣いた。
そこから南にも行けるし、北にも行けるが、どちらに踏み出しても、選択肢の
幅は減るからである。

思想家の墨子は、真っ白な練り絹の糸束を見て涙を流した。
これから黄色にも染められるし、黒にも染められるが、どちらの色に染めても
将来の可能性を切り捨てることになるからである。


人生は選択の連続で、生きれば生きるほどその選択の幅が狭まってくる。
こどもの頃が一番可能性があり大人になるにしたがって可能性が少なくなる。
私もいまとなってはJリーガーにはなれない。

でも私は30才過ぎにして新たな白いキャンバスを見つけたのです。
中国語のお勉強です。まだ一歩踏み出しただけですので
前途洋洋、可能性が広がっています。
皆様も気持ちは同じでしょう。
白いキャンバスをゆっくり少しずつ塗っていきましょう。

漢文も今からゆっくりと。

以上
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by zhuangyuan | 2006-04-16 15:54 | 中国関連DVD、本 | Comments(14)
Commented by ケイチー at 2006-04-16 17:32 x
すべての可能性を手に入れられるわけもなし。凡人なら尚のこと。私だったら真っ白な絹糸の束を見て、これからどんな色に染めようか、とわくわくするでしょう。そのほうが切り捨てる可能性を嘆くより前向きですよ。先人の知恵者におこがましいこと言いますが。
Commented by zhuangyuan at 2006-04-16 21:56
ケイチーさま
染めた瞬間に選択肢が一つ減る。切ないです。中国語をやるとフランス語は出来ない。フランス語の発音だけでも習ってみたい。ボンジュール マダム コマンタレブゥなんてカタカナじゃかっこ悪い。でも選択したものの可能性を追求してゆくのももちろん楽しいことですね。
Commented by ケイチー at 2006-04-17 09:01 x
難しい話をわかりやすく表現できる人は、本当の意味で文章のうまい人ですね。私もすぐこ難しい文章になるので、気をつけなくては。
園田茂人という方の「中国人の心理と行動」(NHKブック)も、わかりやすかったです。すぐ読めました。今年、中国を再訪問する前に読んでおいてよかったなあ、とつくづく思ったものです。zhuangyuanさま始め、中国通の方には今更な内容かもしれませんが、面白いし、なるほどとうなずくこと多し。お勧めです。

日本人の国語力の低下は日々実感します。会社で仕事していて。社員のメモは中国人実習生より変な日本語。漢字無いし、濁点抜けているし、「調整」を「ちょせい」と書いて来るし、主語と述語逆だし、やたらと「ウソ!マジ?」繰り返すし。・・・これは年寄りのグチになりますか?
Commented by 一ノ澤小太郎 at 2006-04-17 18:59 x
はじめまして、一ノ澤小太郎と申します。トラックバックありがとうございます。私も大学で漢文や中国語を学んでいます。これからもよろしくお願いします。
Commented by zhuangyuan at 2006-04-17 20:28
ケイチーさま
外国語やる前にまずは日本語の基礎が必要ですね。
これもゆとり教育の結果でしょうか。「ちょせい」がひつよーですね。
Commented by zhuangyuan at 2006-04-17 20:30
一ノ澤小太郎さま
大学で学んでいるいらっしゃることはほんとうらやましいです。
私は30過ぎのスタートなんで。
お互い学問頑張りましょう。
Commented by かめ at 2006-04-18 09:54 x
大学で学んだという事はマスターしなかった事の代名詞のようです。ワタクシメも大学で漢文を学びましたが、今は秘密にしています。 あなかなし!
どこかでみかけたフレーズですが「親が話さない言葉を子供は話さない」、家での会話が硬くなってます。 アホな親です。
Commented by ケイチー at 2006-04-18 17:30 x
学校では子供に読書を勧めましょう運動が盛んです。(親が本読まないのに子供にだけ強制したって)と白けた思いで眺めています。それに本は面白いくて読みたいから読むのでは?どうもピントずれているなあ、とクビを傾げてしまいます。
Commented by azu-sh at 2006-04-19 14:07
外国語を勉強すると、かえって母語に対する愛着が深まるような気がしませんか?わたしも今中国語を勉強していますが、一番好きな言語はやはり日本語です。外国語がどんなに達者でも、母語を磨くことを怠らないひとに出会うと自分もぜひそうでありたいなと思います~状元さんのように。
漢詩・漢文は日本人なら全員学校で学ぶわけですが、少しでも現代中国語をかじっていると退屈な漢文の授業が突然おもしろくなってきます。わたしは中国語を始めてから漢文の授業の成績がぐんぐん上がりました。反対に日本古文のテストは散々でしたが…←選択肢を漢文に設定したせい?(笑)
Commented by zhuangyuan at 2006-04-19 22:14
かめ様
娘には美しい日本語をしゃべってもらいたいのですが
HGのマネしてフォーッ!とか言ってますからがっくりきますね。
という私も子供にはろくな言葉遣いをせずにすぐ怒鳴ってしまいます。
反省反省。
Commented by zhuangyuan at 2006-04-19 22:16
ケイチーさま
読みなさい!というと天邪鬼な子供は逆に行きますので
自然とすきになるように仕向けたいものです。
Commented by zhuangyuan at 2006-04-19 22:22
azu-shさま
確かに外国語を勉強してると母国語に対しても敏感になります。
自分の使っている日本語がいかにいいかげんかと。

漢文も今習えばさぞかし楽しいのだろうと思っています。
古文はほんと嫌いでした。ロジカルじゃないから。
ことばの意味を吟味するのでなく文法を丸暗記してました。
こんなやり方じゃ面白いわけないですよね。
Commented by 茶タヌキ at 2006-05-10 17:35 x
>学者の楊子は、道がいくつもの方向にわかれているところを見て、声をあげて泣いた。
辻で立ち止まって迷ってるうちに日が暮れて、年月が経って、すっかり足が衰えて旅立てなくなりそう。

>思想家の墨子は、真っ白な練り絹の糸束を見て涙を流した。
とりあえず、防腐効果も考えてとっとと染めないと、虫が食ったり黄ばんで使い物にならなくなりそう。

ふたりともいい大人が泣いてる場合か!と、べらぼうにロマンもへったくれもないようなことが頭をよりぎました。
選択肢の幅は減る、将来の可能性を切り捨てると嘆くことができる古代中国の男子がとても不思議です。
未来の自分は、いま現在の自分よりも確実に老いているのは避けられないだろうから。外国語の学習とか漢文の勉強とか、なにかをやり始めるにしても、先の自分自身より、いまやりはじめちゃうのが、習得するのにいちばん若くて可能性が高い自分自身と思うのです。
Commented by zhuangyuan at 2006-05-12 00:51
茶タヌキさま
コメントありがとうございます。わたくしも前途洋洋の若人ですので
将来の可能性にかけていろいろチャレンジしていますし、考えずにやっちゃう性質です。でも年老いてくると選択するに悲しくなるのかもしれませんね。逆にこうした考え方もあるんだなと妙に感心していまいました。


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