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中華 状元への道

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2017年 12月 03日

戦うのは何のため?

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フランス映画千本ノック
deux jours, une nuit (一泊二日)

 きつい映画でした。資本主義が行き詰まりが世界のあちこちにひずみを生む。弱いところにシワがよる。

二人の母 サンドラは休職明けに復帰すると解雇を伝えられる。休んでいる間にサンドラ抜きでも仕事が回ることがわかった。経営者は残りの従業員に多数決をせまり、サンドラの復職か、退職時に浮いたお金で残りの従業員への1000ユーロボーナスかを選択させた。サンドラが戻るとボーナスは支払えない。結果として退職が決まっていた。復帰そうそう打ちのめされて安定剤に頼るサンドラ。

多数決とは言いながら社長の意を受けた、もしくは忖度した主任が従業員に圧力をかけてボーナスに投票するようにしかけた。これを知ったサンドラは再選挙を要請する。結局中途半端でええカッコしいの社長は再選挙を認める。

ここからサンドラの一泊二日の戦いがはじまる。サンドラの週末の原題はdeux jours, une nuit 一泊二日。同僚ひとりひとりに自分の復職に投票してもらうべくお願いにまわるのだ。

そもそもこうした社長が判断すべき経営課題を従業員の投票にゆだねるという逃げの姿勢が許しがたい。投票という一見すると公平な方法をカモフラージュにして自分のさもしい心をかくす。しかも裏で主任に圧力をかけ解雇を企図する。

社長はサンドラと直接対話を避けつつも、偶然会ってしまうと自社の苦境を言い訳にする。太陽光パネル製造でアジアからの輸入品との熾烈な競争を人員削減の理由としてあげる。流行りの環境ビジネスにとびつくのを見ると、利にーにさといが大局観がない経営手腕が想像できる。

サンドラが訪ねる同僚たちはそれぞれの苦しい立場を説明する。妻の失業、子供の学費、リフォーム費用....。彼らは、サンドラの復帰前の第一回投票において自分のボーナスを選びサンドラの退社に投票している。それぞれ後ろめたさを打ち消すだけの大きな言い訳をしなくてはならない。

一度見えてきたボーナスが消えるかもしれない。当然彼らの家族も反対する。何も悪いことをしていない従業員たちが社長の企んだ投票のために良心をさいなまれる。友情とカネを天秤にかけなければならない。さらに主任は投票結果によりサンドラの復職が決まれば別の誰かが解雇されるとほのめかす。ボーナスだけでなく自分の職もかけなければならない同僚たち。

グローバル経済、雇用の流動化、人件費の変動費化、女性の雇用、移民問題、人種、宗教...

女性の社会進出、ダイバーシティ、民主主義、合理的経営、標語としては響きのいい言葉を杓子定規に表面をなぞるように実践すると個人の心を引き裂いてゆく。でもね、人間は強いんですよ。行動すればね。

95分の短い映画でここまで描くとはこの監督は天才だな。なんども観たらもっと発見がありそう。

あ、フランス語の学習だった。
サンドラと訪問をうけた同僚が繰り返す
<Au revoir >くらいしかわかりません。
Au revoir またね。
つらい「またね」が繰り返される。

ではまた。


以上


by zhuangyuan | 2017-12-03 08:13 | 中国関連DVD、本


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