中華 状元への道

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2005年 12月 30日

チベット 言葉の海へ

 2005年最後に読了となったのはチベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種
中村 吉広 / 山と溪谷社

著者中村氏のブログ旅限無にTBした縁でご紹介いただいた本です。

 語学を学ぶ者として言葉とは何かを考えさせられる本でした。
コミュニケーションの道具なのか、民族文化伝承の絆なのか、経済発展のパスポートなのか?
立場によってとらえ方も様々ですがどれも正しく思えてくる。
中国語に限らず語学学習者必読です。一度よく考えてみなくては。

 簡単に内容紹介しますと、チベット文化圏の中国青海省にチベットを学びに行った著者が日本語を講師になってしまう話。中国の少数民族政策及び普通語普及政策に影響を受け、風前のともし火となったチベット語が日本語と似ていることに目をつけた著者が生徒たちを目覚めさせ最後には生徒たちに漱石の坊っちゃんを翻訳させてしまう感動ものがたり。

 チベット民族、文化の歴史、中国の少数民族政策、現代教育事情はたまた現代日本語状況まで論じた盛りだくさんの内容でのめり込みました。
 私が出会った人々に教えていただいたり、本で読んだりしてこのブログで記事にした下記の現代中国の矛盾なども著者は自ら体験し掘り下げています。読み応えあり。
モンゴル
中国農村 貧困と教育
少数民族

 またこの本を読むとまず自分の語学能力以前に日本語に対する理解の浅さを痛感します。
文法に関する知識、失われゆく古い言葉、氾濫する外来語。外国語を学ぶ際、母国語を大切にし、文化を知るって初めて深く理解できるということを教えられます。

 これまで私はチベットについてほとんど知りませんでした。ダライ・ラマ、パンチェン・ラマの名前は知っていてもその他の文化や中国政府とのかかわりについても知識がありませんでした。

 唯一触れたのは今年初め北京の雍和宫に行った時です。そこはラマ教(チベット仏教)寺院で漢族地区にある最大のものです。清の雍正帝がラマ教信者で皇帝の寺院となった。中華皇帝がラマ教信者だったんです。

 そこには写真や絵画を飾る部屋があって歴代皇帝とダライ・ラマが会見する姿が描かれていました。印象に残ったのは現在インドに亡命中のダライ・ラマ14世が中華人民共和国建国当時人民大会議に出席し重要議題に賛成票を投じる姿が大きく写されていました。チベット問題を知らない人が見れば民族友好の証と思うでしょう。

 実際一緒に見に行った米国籍華人は世界史専攻にも関わらず、その写真の意味するいやみというか恐ろしさを理解していませんでした。実際は冷戦状態なのに友好をアピールしている。
 
 そんな政府の政策のなか、チベット文化圏に分け入って、共産党派遣の漢族の教授に囲まれながらも、日本語を通じてチベット語の再定義と蘇生を試みた著者の大冒険は勇気と根気と知力、体力を併せ持って初めて成し遂げられる偉大なものです。とにかく手掛かりのない環境下で力強く前に進んでゆく著者の行動力、実行力はチョーすごい。(わたしの日本語力退化の影響でこんな言葉しか浮かばないのが悲しい。)
感服いたしました。

 この言葉の海への大冒険は200ページでは語り尽くせないと思います。
続編を期待します。

以上
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by zhuangyuan | 2005-12-30 21:38 | 中国関連DVD、本 | Comments(9)
Commented by ケイチー at 2005-12-31 09:32 x
zhuangyuanさんは本当によく本を読んでいらっしゃいますね。感心します。このブログで紹介いただいた本を何冊か購入したのですが、内容が難しそうで、未だページを開くことができません。
この正月休みに一歩踏み出そうと思っています。読んだら感想を書いてみますね。
2006年がよい年になりますように。
おおっと。先日再度、中検4級の申し込みをしました。3月試験。ヒアリングを鍛えなくては!春に朗報をお伝えできるようがんばらなくちゃ、です。
                 最近古語に惹かれつつあるケイチーより。
Commented by tianshu at 2006-01-01 00:08 x
明けましておめでとうございます!

2006年もお互いに良き年でありますように・・・・・・
Commented by fanson2004 at 2006-01-01 16:12
zhuangyuanさま、はじめまして。
トラバありがとうございます。
中国ってトイレ事情はあんなに開放的なのに・・・
と思うことが最近とても多いです。
以前中国に行った時、言葉が通じないのに漢字を使用した筆談が
カタコトながら通じるのが不思議でした。
Commented by zhuangyuan at 2006-01-02 08:50
ケイチー様
私もご紹介いただいて読めていない本が山のようになってます。パール・バックの大地もその一つ。今年は読みます。試験がんばってください。継続は力なり。わたしも5月に再挑戦です。
Commented by zhuangyuan at 2006-01-02 08:51
tianshu様
あけましておめでとうございます。
2006年は当ブログにて中文作文をもっとしたいと思います。
ご指導よろしくお願いします。
Commented by zhuangyuan at 2006-01-02 08:54
fanson2004様
コメントありがとうございます。異文化コミュニケーションは片言でもたのしいですよね。でも中国も簡体字を使ったり、日本の漢文教育がなくなったりで徐々に筆談も難しくなるのではと心配しています。
Commented by Shira at 2006-01-03 09:57 x
チペット語になった『坊ちゃん』、丸善本店で品切れでしたが、横浜で購入できました。年末に一気に読みました。

著者の経験・思いが山盛りで、ややもすると表現が追いつかないようにも感じましたが、すばらしい本ですね。文章がちょっと硬いのも内容によく合っているように思います。

著者が多忙の中、年間の過程をしっかりと決めるところがいちばん印象に残りました。自分の信念があるから、それに最適な手段を徹底して追い求める。困難や不自由には柔軟に対処する。理不尽には屈しない。

一つのことばがなくなるとき、連綿と続いた知恵も死に絶えるといいます。六千ある言語が、あと百年ほどで半数になるという記事を見たことがあります。

絶滅の危機にさらされている言語の研究記事を探すと、英語で書かれたものがいちばん多いのはなんという皮肉でしょうか。

UNESCO の記事です。
http://www.unesco.org/courier/2000_04/uk/doss01.htm
Commented by かめ at 2006-01-03 22:57 x
新年明けましておめでとうございます。
三日遅れのご挨拶、アンコ椿じゃありませんが、
今年も宜しくご指導のほどを。
ワタクシメもつらいビジネスの現場から中継を続けます。
今、お役所は例の上海領事館の件で大変なようです。
Commented by zhuangyuan at 2006-01-04 20:34
かめ様
今年もよろしくお願いします。私も中国ビジネス最前線からのレポートがしたいのですが扱い品種の大暴落でここ半年は出張に行けません。臨場感ある生中継期待しています。


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