2017年 03月 12日

「大きい歴史、小さい歴史」海賊か皇帝かはたまた密輸人か?

中国語原書会に参加しました。


最近、中国語の勉強が少ない私はこの原書会に申込むことで締め切り効果を持ってして原書を読む仕組みとしているのです。

会に参加した多士済々に私が紹介したのは

「“小的”台灣史」
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夏休みに家族と行った台南歴史博物館で購入しました。

台湾の歴史というと複雑でオランダやら明やら清やら日本やら、はたまた化外の地であったりつながったものはない。そこで歴史とは何を指すのか?

副題にはこうあります。
「從早期社會市井人物的角度,重現十九世紀台灣的社會實況」

早くから移民した市井の人々から見た19世紀の台湾社会

大きな歴史が国家のものだとすれば小さな歴史は人々のもの。もちろん真実の歴史は人々の歴史の積み重ねであるわけですが、実際に歴史と呼ばれているものは時の為政者が過去を都合よく綴った物語であるわけです。この本は過去の文献から人々の暮らしを紡ぎ出していくのです。

「蕃薯也好賺 渡海走私賣蕃薯」
(サツマイモだって儲かるよ。海を渡って密貿易)

こう題する章に登場するのは密輸を企む仲間たち。

当時の台湾は肥沃な土地に恵まれ農産物が豊かでありました。つまり安い。一方工業は発展しておりませんので手工業品は高いのであります。安く買って高く売るのは商人の常。そこに商材があれば商売につなげるのです。ただし国家というややこしい存在ができますと、利権はすべて国家の下にあります。管理の枠を外れるとそれはすなわち密輸。中国語で言うと「走私」と書きます。

小舟から荷下ろしをしているところを捕まえられた4人組は、その背景には別の首謀者がいるといいます。つまり船の持ち主。裏で糸を引く人間は危険を犯しませんので自分で海峡を渡るなんて事はしないのです。もちろん下手人が見つかってしまったらさっさとどこかへ行方をくらまします。トカゲの尻尾切りはいつに世でも。さらにはこの小舟は実は大船と一緒に来たわけですがおおむねの仲間たちは危険を察知するとさっさと逃げてしまったんです。そして捕まったは彼らはどうなったか?黒竜江省に流されて奴隷にされちゃったそうです。サツマイモを売って奴隷にされちゃったんじゃ割が合わない。

ほんとに儲かるところは国家が牛耳っています。国家と言うのは元はと言えば武装した集団であって海賊みたいなものです。日本にいて万世一系とか言う島国にいますと想像できないかもしれませんが大陸の国家なんてものは取ったとられたの繰り返し、今の国家すなわち政府はただ一番強かったものの末なのであります。

「海海人生」には国家になりきれなかった海賊王の話が出てきます。略奪を繰り返すうちに強大な勢力になった彼は百隻の船を引き連れ、2万人を支配下集め自ら王と名乗ります。ただひとたび勢力が落ち目になると、手下から裏切り者が相次ぎみるみる力をうしなっていくのです。最後の海戦の時、砲弾が尽きかけ、彼が弾薬の代わりに使ったのは「番銀」。番=野蛮人。野蛮人のお金つまり外国貨幣です。国は強大だがいつ果てるとも限らない。国の貨幣より野蛮人と蔑む外国の貨幣を信頼し海賊が使うお金としたのです。最後の闘いではその権力の証しの貨幣すらなげ出してしまうのがなんとも象徴的。

海面上除了砲火,還有不少蔡船施放的「番銀」,
外國銀元滿天飛舞的情況

そして本当の王になれなかった彼らは国家から略奪者の名称を与えられるのです。本当の王になれて国家を作れれば彼ら国家の売買行為は貿易と名付けられるのです。中国の皇帝なんてものはみんな最初は略奪者。民から召し上げる金だって税金と言う名に変わるのです。「中国の大盗賊」オススメ。

私も貿易の仕事に携わっていますが、出張で海外を訪れると確かに国家は利権集団だということがよくわかります。例えばマレーシア。近年のエネルギー価格の暴落で財政困難に陥った政府は利益の出ている企業を訪れ徴税に行きました。私の取引先に来た国税局の人間は武装した兵を連れてきたそうです。お前の金は俺の金。隠すやつは許さんぞ。インドは最近高額紙幣を使えなくしました。もちろん銀行に行けば高額紙幣の小さな体に変えてくれる。では何のためにそんなややこしいことをするのだろうか。それは利益を上げているブラックマーケットのお金をあなたにあぶり出すこと。銀行に両替に来たところで収入を記録する。つまり納税せざるを得ない資産を把握するのです。インドは人口がたくさんいますが納税しているのはわずか3%だと聞きました。85パーセントの人たちは納税できないほど貧乏だと言いますが15%の人たちが沢山資産を持っているのです。つまりそれを表に出す。お前の金は俺の金、国家がそう言っています。もちろん国家が厳しくすればするほど密輸の旨味は増すんですけどね。古くは禁酒法時代のアル・カポネだったりメキシコ密輸カルテルだったりね。

閑話休題。
生活のため家族のために海を渡ろうした市井の人々も国家の利権を少しでも冒すと犯罪者にされてしまいます。大きな歴史に振り回される小さな歴史上の人々。この後20世紀が近づくとこの大きな歴史に日本が登場していくわけです。日本時代の小さな歴史の物語もぜひ読んでみたいものです。

原書会に参加の皆さんの小さな歴史にも興味津々。巡り巡って地球の片隅で中国語原書を通して世界を覗いてる。なんかワクワクするでしょ?言葉ってほんと楽しい。

以上

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by zhuangyuan | 2017-03-12 23:31 | 中国関連DVD、本 | Comments(0)


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