2010年 09月 20日

ネットde読書会 「狼图腾」 第33章

この章は悲しい悲しい物語。

別の草原に移ることになった陈阵たち。
当然、飼っている小狼もつれてゆくのですがいうことを聞かない。

熊可牵,虎可牵,狮可牵,大象也可牵。蒙古草原狼,不可牵。

熊や虎、ライオンや象はひかれても、モンゴル狼はひかれない。


引越しの牛車につなぎひっぱろうとしますが徹底抗戦します。

龇牙咧嘴,凶狠咆哮,身子的重心后移,四爪朝前撑地,梗着脖子,狼劲十足,寸步不让

牙をむき出し、大口を開き、獰猛に吼え、重心を後ろにうつし、四足をつっぱり、首を硬くし、
力いっぱいで一歩も譲らない。


こんな表現も使われます。

桀骜不驯   強情で言うことをきかない。

宁死不屈   死んでも屈しない

犟得过牛 牛より強情

不屈不挠   不撓不屈

絶対いうことを聞かないのです。

つながれるかつながれないか

これが犬と狼をわける境界線なのだといいます。

ただそれでも牛車は進むのです。

だんだん狼も体力を消耗し弱ってきます。

倔强的小狼被拖了四五里,它后脖子的毛已被磨掉一半,肉皮渗出了血,四个爪子上厚韧的爪掌,被车道坚硬的沙地磨出了血肉。

屈強な小狼も4,5里引きずられ、首の後ろの毛は摩擦で剥げ落ち
皮膚には血が染み出し
四つの爪に掌は、硬い車道の砂に擦られて血が滲んでいる。


そしてついには血を吐きます。
それでも従わないのです。

じゃあ置いていけば? と张继原。
でもそれは出来ない。と陈阵。

人に育てられ牙の尖りをなくした狼は野生に返せはきっと淘汰されるのです。
モンゴルの草原を愛し崇拝しつつも知青たちは自然の摂理を犯してしまっている。

これ以上引きずることを続けるのに耐えられなくなった陈阵は
燃料の牛の糞を捨ててしまい、牛車の上に小狼を乗せる場所をつくります。

抵抗しつつも無理やり籠の中に押し込められた小狼は
今度は完全に打ちのめされてしまいます。

它异常惊恐地站在不断摇晃的牛车上,越来越害怕,吓得几乎把自己缩成一个刺猬球。
小狼不吃不喝,不叫不闹,不撕不咬,竟像一个晕船的囚徒那样,忽然丧失了一切反抗力。

小狼は揺れ続ける牛車の上で異常に恐怖に慄き、どんどん恐れを感じ、
ついにはハリネズミが丸まるように縮こまってしまった。
飲まず食わずで、吼えも騒ぎもせず、噛み付きもせずに
まるで船酔いした囚人のように突然一切の抵抗力を失ったのです。


悲しすぎる描写です。

狼は草原では負けるものがいないのですが
ひとたび草原から離れ、閉じ込められると途端に力を失ったのです。

これはまるでギリシャ神話のアンタイオス(安泰)のようだといいます。
アンタイオスは大地では無敵ですが大地から足を離すと力がでないといいます。

ギリシャ神話のこの英雄はモンゴル狼を指すのではないかと思いをめぐらすのです。

ソ連共産党史ではこの故事をあげ
大地を人民にたとえて、人民を離れると党は力を失うと訓戒をあたえたそうです。

ともかく知青たちは狼を愛するあまり狼を飼い、
逆に狼を壊してしまったのです。


いっぽう彼らの营盘ではもっとスケールの大きい破壊が進んでいたのです。

一部勢力が上層部へのへつらいで成績を上げたいばかりに狼をどんどん殺す。
草原のバランスを無視して。

しかもその方法がだんだんエスカレートしてゆく。
鋼製ワナを仕掛けたり、毒をまいたり。

目先の利益だけを追い、自然のバランスを壊してゆく。
いまでいったら地雷埋めて、毒ガスまくみたいなものでしょうか?
後世のことは一切無視。

知青や長老たちは嘆くのです。

再这么打下去,额仑草原的人就上不了腾格里,额仑草原也快完了。

このまま狩りを続けてゆけば
コロン草原の人は天国にはいけない、
コロン草原もすぐになくなってしまう。


 陈阵无法平复这位末代游牧老人的伤痛。谁也阻止不了恶性膨胀的农耕人口,阻止不了农耕对草原的掠夺。

陈阵この遊牧民の末代である老人を癒すことはできないのだ。
農耕人口の悪性膨張を誰も止められないし
農耕民族の草原に対する略奪も止められないのだ。


悲しい物語はつづきます。


以上
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by zhuangyuan | 2010-09-20 23:04 | 中国関連DVD、本 | Comments(7)
Commented by arip at 2010-09-21 22:37 x
こちらを読んでから33章聞いたらわかりやすかったです。老人が会議に呼ばれなくなった理由は前の章にあった訳ではなかったんですね。
Commented by zhuangyuan at 2010-09-22 22:51
aripさま この小説をオーディオブックで聞くってのはけっこう難しそうですね。知らない漢字多いです。長老のあきらめがなんか悲しいですよね。
Commented by tenohira-ya at 2010-09-24 13:12
いつもながらzhuangyuanさんの紹介のおかげで話がよく分かります。
最近はちょっとあきらめ気味で読めておりませんでしたが、物語を体験させていただいてる感じでありがたく思っております。
Commented by tenohira-ya at 2010-09-24 13:12
小狼はそんな運命に……。
Commented by zhuangyuan at 2010-09-24 20:49
tenohira-yaさま 小狼はホント健気で読んでいて悲しくなる。人に飼われて繋がれて、牙を削られてもなお、狼性を失わずに野生であろうとする。でも実際に野生の世界に戻ったら....。うーぅ、つらい。
Commented by ケイチー at 2010-09-25 01:40 x
このあたりから、読むのが苦しくなります。

小狼には、このあとさらに惨い最期が待っていますよね。

作者が小狼を育てたのは、狼への愛着から生まれた行動だったのでしょう。
でも、小狼にとっては、繋がれたままの、苦痛に満ちた一生でしたから。
他の兄弟と同じように、目も開かない赤ちゃんの時にあの世に送ってあげたほうがよかったのでは、と思ったりもします。
Commented by zhuangyuan at 2010-09-25 09:40
ケイチーさま 自然の摂理というのは人間の及ばないところでしょうから大きな生態系の一部分として狼が存在していたわけで、小狼があの世に行くのならそれも運命だったのでは?それを北京から来た知青が善意であったとしても、農耕民族としての外来種として関与してはいけないのです。愛してなおこういう結果なのですから、貪欲に金を目当てに自然を破壊したらなおさらです。


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